【スズキバレーノ試乗】インド帰りの優等生。軽量&ロングホイールベースでしなやかな走りを実現!

3月9日に発表された「スズキ バレーノ」。インドで生産し日本国内で販売されるという形態が何かと話題ですが、まず大事なのは実際の走りです。スペックを見ると軽量ですし、特に新開発の1リッターターボエンジンとの組合せで、「いい走り」も期待できそうな感じです。今回、箱根で試乗する機会を得たのでご紹介しましょう。(飯嶋洋治/RJC会員)

スズキ バレーノとは?

世代を問わないコンパクトなハッチバックとして、新たなユーザーを狙う!

現在、スズキのコンパクトカーの代表格と言えば「スイフト」になるのでしょうが、スポーディなイメージが強くファミリー層に訴求するには若干弱い面がありました。もちろん「ソリオ」もあります。こちらはワゴンですから使用用途によってはいいでしょうが、コンパクトな乗用車が欲しい……という層とはちょっとずれます。今回の「バレーノ」はそこからこぼれてしまった「コンパクトな乗用車が欲しい」という層に直球で攻めたという感のあるクルマです。

インド・マネサール工場は、スズキの中でも最新鋭の設備を持つ工場

もうひとつ注目されたのが、インドのマルチ・スズキ・インディア社マネサール工場で生産されたということです。イメージの問題なのでしょうが、バレーノでは品質の問題が話題になりがちです。しかし同工場はスズキの中でも一番新しい工場となり、検査に関しては日本から多人数を送り込んで審査しているということで、スズキとしてはそこにばかり注目されると、「ちょっと違う……」という面もあるようです。 開発コンセプトは、「デザイン、居住性、走行性能、安全性能を高次元で調和させたコンパクトハッチバック」。すでに「GOIN」でも、クルマの概要は紹介していますが、今回試乗をする機会を得たので、試乗インプレッションも含めて改めて紹介しましょう。 2015年9月に発表され、10月からはインドで発売が開始されたスズキの新型車バレーノ(BALENO)はスイフトで培ったコンパクトカーのノウハウを詰め込んだ、Bセグメントのグローバル戦略車となります。2016年3月9日にお披露目が行われましたのでご紹介いたします。



エクステリアは?

ワイドアンドローなボディスタイルは「いい走り」を期待させる

デザインテーマは「Liquid Flow(リキッドフロー)」だそうです。液体が流れるような流麗さやエレガントさを意識したものといえるでしょう。個人的には全体にまとまってはいるものの、やや地味かな? と思いました。縦型のヘッドライトや幅広のフロントグリルやなどはスポーティさを感じさせます。ボディも全幅を広くとり、最近のこのクラスの乗用車としては珍しく全高も低く抑えられてるのは、好感が持てる部分です。ただ、悪く言えばボディがのっぺりとしている感じ…。基本的には落ち着きや安心感を感じさせるスタイルにまとまっていると思います。外から見た時にヘンな威圧感を感じさせない上品さはウリになるのではないかと思います。

インテリアは?

廉価なクルマを感じさせないインテリアは、コンパクトカーを知り尽くしたスズキの手腕!

先般試乗したイグニスもそうですが、150万円前後という廉価なクルマに属していながら、安っぽさのない(見せない)上手なインテリアとなっていると思います。フラットでワイドなダッシュボードは、室内で結構な面積を取っていると思いますが、乗員スペースも十分に確保されています。インパネはマルチインフォメーションディスプレイを採用。これは、瞬間燃費、平均燃費、航続可能距離などが確認できます。XGには低燃費走行をしていると、メーター表示がブルーからグリーンとなるというギミック? も備えられています。

存在感を主張しないシートにも、技術者のこだわりが詰まっている

シートポジションも適度にローポジションな感じで、峠道などではちょっとやる気? を起こさせるようなものです。後にも触れますが、シートは座り心地はもちろん、軽量化を果たすためにも工夫されたものだそうです。シート地基本はファブリックですがターボを装着したXTグレードにはオプションで本革が選べます。



シャシー、サスペンションは?

新時代のスズキのプラットフォームの考え方を受け継ぎ、軽量と高剛性を追求!

プラットフォームはBセグメント(コンパクトカー)用として新開発したものとなりました。アルトから続くプラットフォームによる軽量化路線ですが、これはイグニス、そして今回のバレーノも引き継がれています。主要な構造を一から見直し、走行性能に関わる部分は十分な強度を確保するととみに、無駄を省き軽量化するというコンセプトです。見逃される部分ですが、こうした考えはシートフレームにまで及んでいます。開発担当者にお聞きしたところ、シートだけで2.5kgの軽量化を果たしているということでした。もちろん軽くするだけではなく、骨格部分の安定化、サポート製の改善などシートとしての機能は向上させた上でのことですので、こうしたところにもクルマづくりの真面目さが現れているのではないかと思いました。 ボディは高張力鋼板を30%(重量比)使用し、さらに軽量の超高張力鋼板の使用率が16%として、軽量化を追求しています。この辺は走りに現れてくるところですので、後ほどご紹介します。

スタンダードなサスペンション形式ながら、欧州仕込みのセッティングで引き締める!

サスペンションを見てみましょう。フロントはマクファーソン・ストラット式です。サスペンションフレーム、取付部位の剛性をアップしながら軽量化を図りました。ロワアームの形状、構造の見直し、フロントベアリング部のユニット化など、結構マニアックに軽量化を狙っているようです。リヤサスペンションはトーションビーム式となっています。もともとシンプルで軽量化には適したサスペンション形式です。こちらは中間ビームにスタビライザーを内蔵したり、トレーリングアームの構造を見直すことで、横力支持剛性の向上を図っています。 サスペンションセッティングは欧州で徹底的に走りこんで行なったというのも「インド生まれ」のバレーノの特徴と言っていいでしょう。前後のコイルスプリングレートやショックアブソーバーの減衰力設定もその中から生まれたものです。

パワーユニットは?

XGには1.2リッターNAエンジンを、XTには新開発1リッターターボエンジンを搭載!

バレーノはXT、XGというシンプルなグレード構成となっていますが、エンジンはXTが1リッターターボ、XGが1.2リッターNAとなっています。特にXTには新開発のK10C型ブースタージェットエンジンが搭載されています。このエンジンの目標は1リッターエンジンに筒内直噴とし、ターボを装着することによって1.6リッター並のエンジン出力を実現することと言います。直噴化した意図は、シリンダー内でより緻密な燃料量、適切なタイミングで燃料を噴射し、より良い混合気を作り、効率の良い燃焼を行うことといえるでしょう。また、シリンダー内で直接燃料を吹けるということは、冷却効果も期待でき、高圧縮にしたときの耐ノッキング性もアップすることになります。

ターボは定速走行でNA的に、加速時などに過給を保ち動力性能をアップ!

ターボは「ウエストゲートバルブノーマルオープン制御」を採用しました。これは定速走行などではウエストゲートバルブを開制御とし、加速や高速走行ではバルブを閉制御し、排気ガスの流入量を調節するという過給圧コントロール制御が行なわれます。ターボエンジンでは、通常定速走行ではウェストゲートを閉じて過給圧を保ち、急加速などの場合、過給が掛かり過ぎると開く制御をするのですが、その逆というのも面白い部分です。この制御によって動力性能と燃費性能の両立を図ったというのは発想の転換なのかもしれません。トランスミッションは6速ATでマニュアルモード付パドルシフトとなっています。 XGに搭載されているのは、K12C型デュアルジェットエンジンです。圧縮比は12.5を高めたことで、低回転でのトルクのアップを図っています。また、フリクションの低減、軽量・コンパクト化を目指すことによって、良好な燃費性能と必要にして充分なパワーの両立を図りました。イグニスのようにマイルドハイブリッドとはなっていません。それに組合せられるトランスミッションは副変速機付CVTとなっています。どちらかというとXTがスポーティに振ったモデル、XGが普及用に振ったモデルといえそうです。

乗り心地は?

低重心、ロングホイールベースで素直な操縦性を見せる!

まずXGから乗りました。基本ファミリーユースがメインでしょうからスポーティなものを期待していたわけではありませんが、そのわりには「けっこうイケる」というのが、箱根のワインディングを走った印象です。もちろんソフトな方ではあると思いますが、軽量化とワイドアンドローはボディが効いているのだと思いますが、ステアリングを切れば切っただけ曲がる、というイメージ。ロールはやや大きめな感じを持ちましたが、よほど無茶なことをしなければ姿勢を崩すということはないように思いました。ただ、度々言われていることですがCVTは好みの分かれるところだと思います。もちろん、つなぎ目のない加速ができるということでは合理的なのですが、フィーリング的にどうか? という部分です。

1リッターターボエンジンはNAエンジン+α的なキビキビ感を持つ。

その後短時間ながらXTに乗りました。現代のターボエンジンですから、「ターボが効いてるぞ!」と主張してくるものではありませんが、たしかに1リッターと思えないような力強さを感じさせるものでした。圧縮比が10.0ということは、一昔前なら十分に高圧縮と言われた部類に入ります。ほどんどNAで走りながら、必要な時にターボで加給をかけるという、燃費とパワーの良い落とし所を考えたエンジンと言っていいでしょう。こちらのトランスミッションは6速ATです。これもキビキビとした走りを与えるのに貢献していると思いました。

主要諸元

【寸法・重量】
全長 3,995mm
全幅 1,745mm
車高 1.470mm
室内寸法 長さ☓幅☓高さ 1,975mm☓1,440mm☓1,175mm
ホイールベース 2,520mm
トレッド 1,520mm(XT)/1,530mm(XG)
最低地上高 120mm
車両重量 950kg(XT)/910kg(XG)
乗車定員 5名
【性能】
燃料消費率 JC08モード 20.0km/L(XT)/24.6km/l(XG)
主要燃費向上対策 可変バルブタイミン、電動パワーステアリング、ロックアップ機能付トルコン、筒内直接噴射(XT)、自動無段変速機(XG)
最小回転半径 4.9m
【エンジン】
・XT
型式 K10C型
種類 水冷4サイクル直列3気筒直噴ターボ
弁機構 DOHC12バルブVVT
内径☓行程 73.0mm☓79.4mm
総排気量 996cc
圧縮比 10.0
燃料供給装置 EPI(電子制御燃料供給装置)
最高出力(ネット) 82kW(111PS)/5,500rpm
最大トルク(ネット) 160N-m(16.3kg-m)/1.500-4,000rpm
燃料タンク容量 37L
使用燃料 無鉛プレミアムガソリン
・XG
型式 K12C型
種類 水冷4サイクル直列4気筒直噴
弁機構 DOHC12バルブVVT
内径☓行程 73.0mm☓74.2mm
総排気量 1,242cc
圧縮比 12.5
燃料供給装置 EPI(電子制御燃料供給装置)
最高出力(ネット) 67kW(91PS)/6,000rpm
最大トルク(ネット) 118N-m(12.0kg-m)/4,400rpm
燃料タンク容量 37L
使用燃料 無鉛レギュラーガソリン
【ステアリング】
歯車形式 ラック&ピニオン式
【ブレーキ】
主ブレーキ形式 前/後 ベンチレーテッドディスク/リーディング・トレーリング
制動倍力装置 真空倍力式
制動力制御装置 ABS[EBD付]
駐車形式 機械式後2輪制動
【懸架装置】
懸架方式 前/後 マクファーソン・ストラット式/トーションビーム式
スタビライザー形式 前/後 トーションバー式/トーションバー式
タイヤ 185/55R16 83V(XT) 175/65R15 84V(XG)

まとめ

試乗を終えて、XTとXGのどっちがいいかな? と考えると、ちょっと迷ってしまいます。個人的に気に入ったのはXTです。3気筒ターボエンジンは、なかなか気持よく回りますし、6速ATのキビキビとした走りを考えると、こちらに分があります。ただし、価格は高くなりますし(161万7千840円)、ガソリンも無鉛プレミアム仕様となってしまいます。「足」として考えた場合はXGになります。必要にして十分なパワーを持つエンジンと、CVTの組合せ、そして軽いボディで燃費を稼ぎ廉価で経済性は高いものとなります(141万4千800円)。ガソリンもレギュラー仕様です。特にクルマにこだわりがない人なら、XGをお勧めします。そういう意味で、これからマーケットにどういう受け入れられ方をしていくのか、注目していきたいと思います。