カーレース映画の至宝「栄光のル・マン」

「栄光のル・マン」。映画ファンじゃなくても、そのタイトルを聞いたことのがある人は多いのではないでしょうか?名優スティーブ・マックイーンが情熱と財産をつぎ込んだ映画は、今でも映画ファンはもとより、カーレースファンにも愛されている名画です。今日は、この名作「栄光のル・マン」をご紹介します。

映画の前に、ル・マン24時間耐久レースについて

ル・マン24時間レース。毎年6月にフランスのル・マン近郊にあるサルト・サーキットで行われる自動車の24時間耐久レースです。毎年、メーカーやプライベートチームの最新鋭耐久マシンが激走を繰り広げる過酷なレースとして知られていますね。



「栄光のル・マン」そのあらすじ

このル・マン24時間レースを舞台にした映画が「栄光のル・マン」。1971年に撮影されたアメリカ映画です。あらすじは

ガルフ・ポルシェチームのドライバーとしてアメリカ人レーサーのデラニーがル・マンの地に戻ってきます。彼は前年のル・マン24時間レースでフェラーリチームのマシンと衝突しリタイア。相手のドライバーは死亡してしまうという悲劇の主役でした。事故を起こした責任を感じながらサルト・サーキットに戻ったデラニーは、死んだドライバーの未亡人リサが姿をみせ、フェラーリチームのオーラックの傍に寄り添っている姿を見てしまいます。
そしてスタートの時間を迎えます。デラニーはカーナンバー20の愛車に乗り、カーナンバー8のライバルチーム、フェラーリのスターラーが乗る8号車との首位争いを繰り広げます。そしてル・マンの夜明け。リサの傍らにいたオーラックの運転するカーナンバー7のフェラーリがコースアウトし爆発。オーラックは重傷を負います。そしてデラニーもその事故に気を取られた上、他車に絡んでしまいクラッシュ、愛車は大破してしまうのです。デラニーは一旦、ピットに戻ると、前年の悪夢の再現…再び愛する人がレースの大事故に見舞われてしまったリサを労わりに向かいます。するとリサは「そんなに大切なの?早く走ることが?」と質問します。デラニーは「世の中苦手なことばかり。運転が得意なものにとってレースは、人生なんだ」と答えるのです。

どんな事故があろうと、物語の軸となるレース自体は終わったわけではありません。24時間が経過していないのです。でも、デラニーは車が大破…するとチーム監督から選手交代してカーナンバー21のポルシェをドライブするように頼まれます。主役のデラニー、無事にレースへ復帰です。そしてスターラーと共に競り合いを繰り広げながら、激しく過酷なレース結果は最終LAPにまでもつれ込む…その結末はいかに! という内容です。

マックイーンが情熱を注ぎ込んだ映画

この映画で主役「デラニー」を演じた名優スティーブ・マックイーン。カーレース好きなハリウッドでも、並々ならぬレースへの情熱を持った彼は、彼自信が創設した「ソーラー・プロダクション」の全勢力をあげ、この映画を制作します。その結果、今でも本格カーレース映画の最高傑作として評価されているのです。

カーレースを愛した末なのでしょう。映画は全編セミ・ドキュメンタリー風の作品で、実際の1970年ル・マン24時間レースの映像、そして映画向けに撮影された映像とが組み合わせられています。そのためル・マン、サルト・サーキットでの観客の盛り上がり、喧騒、興奮は本物のレースの臨場感そのもの。モータースポーツからも、その緊迫した雰囲気が高く支持されています。しかし、一方で映画として重要な人間ドラマは控えめになり、またスティーブ・マックイーン以外の有名俳優は起用されず、映画興行としては失敗作となってしまいました。このためマックイーンは自身が経営していたソーラー・プロダクションの解散に追い込まれてしまいます。名作と評価いう評価と興行成績は、必ずしも同義語ではないのですね。

でも何故か日本では大ヒット。今もモーターファンの間で愛されています。



「栄光のル・マン」トリビア

実は、この映画には多くのエピソードがあります。
■ F1映画にしたかったマックイーン:
マックイーンはF1の映画を撮影しようとしてたが、既に完成していた『グラン・プリ』(こちらも名作です)の企画かぶりとなるので、やむなくル・マン24時間レースがテーマになりました。
■ 最初の監督は途中降板:
監督は、それまでにもコンビを組んだジョン・スタージェス(代表作『荒野の七人』『大脱走』)が当初は務めていました。しかし、映画に対する方向性のち外から大げんか。カーレースのドキュメンタリー的な作品にしたいマックイーンは、興行成績を意識してストーリー性を重視するスタージェスを降ろしてしまいます。そのスタージェスは、この映画を酷評したようですが、興行的に失敗した結果を考えるとスタージェスの主張も正論だったのでしょう。
■ 本当のレーシングマシンに積まれた撮影用カメラ:
1970年のル・マン24時間レースでは、カメラを3機積みこんだカーナンバー2、29の2台が参加しています。つまり撮影車輌であり、レース車両ですね。残念ながら周回不足(未完走)でしたが、9位相当でのゴールでした。重量が重くなるので不利になると思うのですが…すごい協力姿勢です。
■ クラッシュしたフェラーリは本物?:
クラッシュしたフェラーリは、個人の所有物を借り受けたもの。だから、外見のボディのみをフェラーリに似せた別の車を使っています。マックイーンと言えども、やはりフェラーリは高かったのでしょうか。
■ レース優勝メンバーがカースタント:
1970年のル・マン24時間を優勝したチームのメンバー(アトウッド、イクス、ジャブイーユ)や、アンドレ・デ・コルタンツ、ギ・リジェ、ユルゲン・バルト等、10名以上の当時の現役レーシングドライバーがカースタントドライバーとして参加したが、映画のエンドテロップでは最初にクレジットされています。マックイーンと並んで最初にクレジットしたと言うのは敬意と感謝の表れなのでしょうね。
■ 撮影中に大事故:
カースタントドライバーとして参加したデビッド・パイパーは、撮影中に片足を切断する事故を起こしています。
■ バイパーの事故が映画のクライマックスシーンに:
パイパーの事故は、映画のハイライトシーンとしてマックイーンの乗る車のクラッシュする場面で再現されています。あくまで再現なので、リモコンで操作した車両をつかっています。人間は乗っていません。

まとめ

名優スティーブ・マックイーンが情熱を傾けた映画「栄光のル・マン」。ストーリー性よりもレースの臨場感を追い求めた事は、興行成績には結びつかなかったのでしょうが、映画が今でも愛される最大の理由になっているのではないでしょうか?

レースファンの方には、ぜひ、観ていただきたい映画です。