ミニミニ大作戦 60年代娯楽欧画の醍醐味を味わう

“MINI MINI 大作戦(ミニミニ大作戦)”という映画をご紹介します。製作は1969年ですから、映画と言えば“リアル”よりも“娯楽”の時代。“そんなわけないじゃん”という内容を楽しむのが映画でした。私はミニに乗り出した頃、知人に教えてもらって観たのですが、ミニ乗りとしては堪らなく楽しい内容に小躍りしてしまいました。

MINI MINI 大作戦とは?

MINI MINI 大作戦は、1969年に公開された泥棒映画で、いわゆる娯楽映画の部類のB級作品です。もちろん“MINI MINI 大作戦”というのは邦題で、原題は“THE ITARIAN JOB(イタリア人の仕事)”です。
イギリスで制作された映画ですから、“イタリア人の働きぶり”をあらわす内容なのですが、なんともウィットに富んだ素晴らしい作品なのです。

時代背景

ゲーム・音楽・動画・ショッピング、インターネットがもたらした便利と楽しみはキリがありませんね。テレビの中でもたくさんの娯楽の多い現代では、それらと一線を画すため、映画に求められるのは仮想の世界=“リアリティ”です。登場人物に自分をラップさせ、どっぷりと入り込んで物語を楽しむスタイルですね。最近では3Dも登場して、もはや仮想と現実の境があいまいになりそうです。
でも、60年代当時では少々勝手が違ったようです。デジタル技術などは皆無でしたから、画質の荒い小さなスクリーンを、大勢で眺めるスタイルだったため、およそ入り込める世界ではなかったのです。
何よりも、現代とは違って他に娯楽らしいモノが無く、映画自体に娯楽性を求められる存在でした。いまでこそ“娯楽映画”と呼び分けられますが、当時は娯楽=映画だったのです。



娯楽映画の鉄板

いわゆるB級映画と呼ばれる部類ですが、要所要所に洒落がちりばめられていています。時には滑稽に、時にはシュールに。そこになかなか迫力のあるカーチェイスが盛り込まれていますので、緩急もしっかりあって“あっ”という間の99分です。
そして、用意されたエンディングは・・・

タイトルに込められたウィット

出典: https://m00ch.wordpress.com/2010/09/21/the-italian-job-hd-wallpaper/
“The Itarian Job”というタイトルですが、そのまま訳すと“イタリア人の仕事”となりますよね。ここに込められた洒落がなかなかなのです。
あまり書きすぎると映画の内容がネタバレしてしまうと思ったのですが、検索すればネット上にたくさん書いてありますので、あまり遠慮せずに書いてしまおうと思います。
ミニミニ大作戦は、イギリス人の強盗団がイタリアへ金塊を盗みに行く物語です。そこで遭遇するイタリア警察とのカーチェイスや押し問答がなんとも面白いんです。実に間の抜けた計画の強盗なのですが、それにもましてイタリア警察の動きが後手後手で、およそほめられたものではありません。そのあたりを皮肉ったタイトルなんですね。
実際には、“イタリア人の仕事なんてこんなもん”と訳すべきなのでしょう。

タイトルからして笑い者にされる立場にも関わらず、イタリア当局はロケ撮影に全面協力するという度量の広さを見せたのです。おかげで、英伊両国産車がイタリアの街中を派手に疾走する、映画史に残るカーチェイスシーン撮影が実現したのです。

登場人物のおかしな設定

チャーリー役のマイケル・ケインを始め、登場人物たちのとぼけた演技がなかなか秀逸なのです。収監中の身でありながら刑務所を我がもののように支配するビッグ・ボス=ブリッジャーは、“女王陛下の熱烈なファンであり愛国者”という誇張たっぷりのキャラクター。名優ノエル・カワードならではのすばらしい演技です。
終盤、刑務所内で囚人たち一同に歓喜のコールを受けながら闊歩するシーン。カワードは得意の貴族的演技で、実に堂々と喝采に応える貫禄を示すことで、生涯最後の映画出演を華やかに飾りました。
その他の登場人物も実に個性的な設定です。例えばコンピューター技術の天才・ピーチ教授は、太った女性に執着するいわゆる“デブ専”で、イタリア行きを引き受ける代わりにデブの女性を紹介するという条件をつきつけるという暴走ぶりなのです。

隠れた主役“Mini cooper”

出典: http://www.aronline.co.uk/blogs/news/news-italian-job-tops-the-polls/
この映画のもう一方の役者は、俳優たちに負けない個性的な車たちです。なかでも主役級の働きをしているのは、1960年代のイギリスのアイコンの一つ、ミニクーパー。
ユニオンジャックの三色をまとったミニはもちろん、冒頭に登場するもすぐに壮絶なクラッシュを見せるランボルギーニミウラ。ミラノの街中にあふれる2代目フィアット・500。ミニと壮絶なカーチェイスを繰り広げるアルファ・ロメオ(ジュリアスーパー)のパトカー。他にもアストンマーチンやジャガーまで。
華麗なドライブシーンだけでなく派手な破壊シーン、スピード感あふれるカーアクションなどなど、彩りを加えています。

あらすじを

主人公のチャーリー・クローカー(マイケル・ケイン)はイギリスのケチな泥棒。2年間の服役を終えたチャーリーは、大泥棒のブリッジャー(ノエル・カワード)たちに見送られて出所しました。
やっと塀の外に出られたチャーリーは、ローナ(マーガレット・ブライ)を初め、数人の女の子に囲まれ2年間の垢を洗い落としたのでした。そして、仲間が残したアストン・マーティンを引き取りに出かけます。
アストン・マーティンのエンジンルームには、最後の仕事で手に入れた現金が隠してあったのです。次の仕事は前代未聞の大仕事。マフィアに殺されたベッカーマン(ロッサノ・ブラッツィ)が残した仕事で、トリノの街中で400万ドルの金塊をいただこうという手筈です。
女王陛下のために、中国からイタリアに運びこまれる400万ドル分の金塊を頂いてしまおうって寸法なのです。
チャーリーは、まだ刑務所にいるブリッジャーの助けを借りて、イギリスで強盗団を組織したのでした。コンピューターに強い奴、車の運転に強い奴。かくしてイタリアへ向けて出発した一行ですが、セント・バーナード峠でマフィアのリーダー、アルタバーニ(ラフ・ヴァローネ)におどしをかけられます。
命からがらトリノにたどりついた強盗団は、夜のうちにミラノ全市を停電させて交通管制センターのコンピューターのプログラムを混乱させてしまうのです。
出典: http://www.telegraph.co.uk/motoring/picturegalleries/8018258/Star-Cars-Where-are-they-now.html?image=11
やがてトリノ空港に金塊が到着します。強盗団は、交通マヒに乗じて装甲車から金塊を奪いとったのでした。あとはイタリア特有のアーケードや広場を利用して、車をブッとばすのです。トリノ警察もマフィアも指をくわえているばかり。

ラストに用意された“謎”

出典: http://www.virginmedia.com/movies/features/top-10-vertigo-inducing-movie-moments.php
首尾は上々だったはずなのですが、金塊を運ぶバスが重みで道路からハミ出してしまったのです。そこは断崖絶壁の上。さあ大変。なんと金塊の重みでバスはシーソーのように揺れ出してしまいました。
そんな時、チャーリーが胸をたたいて言いはなったのでした。「俺にまかせておけ、名案がある」と。

金塊はバスの後方。取りに行けばバスはバランスを崩し、金塊もろとも全員で谷底へ真っ逆さま。さりとて誰かが降りれば、これまたバスはバランスを崩して同じ事に。
果たして彼らの運命やいかに??



リメイクされています

出典: http://eng.cinemacity.org/the-italian-job.film.73.htm?year=2010
2003年にアメリカでリメイクされています。登場するのはニューミニ(BMW MINI)です。69年版よりもドラマに趣を置いたのがポイントです。カーチェイスのスピード感もグッと増しています。車が似て非なる乗り物ですからね。
プロフェッショナルならではのスタイリッシュな仕事ぶりと、“復しゅう”をキーワードにした胸の空くような展開がなかなかです。69年版にはなかった、友情や父娘関係といったドラマが伏線として張り巡らされていて小気味良さもプラス。
さらに地下鉄や下水道を縦横無尽にカッ飛ばすミニ・クーパーの走りっぷりは、スピード感も増していて手に汗握るスリル感です。
舞台も変わっていて、イタリア・ベニス、アメリカ・ロスとセレブ感が増していますね。

あらすじは69年版を踏襲

ベニスで50億円の金塊を奪ったチャーリーら5人の仲間たちでしたが、仲間の1人だったスティーブの裏切りで金塊は彼に1人占めされてしまいます。しかも、伝説の金庫破りのジョンはスティーブに殺されてしまったのでした。
チャーリーと残った仲間たちはミニ・クーパーを駆使して、アッと驚く作戦で金塊の再強奪を狙うのです。

気になるところが

それはリメイク版の邦題について。69年版と同じ“MINI MINI 大作戦”という邦題がついているのですが、色々と思うところがなきにしもあらずです。
邦題の『ミニミニ大作戦』とは、もちろん金塊強奪に使う3台のミニクーパーから名付けられたのでしょう。その裏で、60年代後半にミニスカートが流行っていたことも、少なからず影響していると思うのです。
そして、この時代は“ナントカ大作戦”というタイトルがいたるところでもてはやされていたことも事実です。
そういう時代背景に加えて痛快な犯罪映画のタイトルであることを考え合わせれば、当時としてはかなり“粋”なタイトルだったと思うのです。

なにが言いたいのかというと、ミニミニ大作戦というタイトルは60年代限定のものであるべきではないかと思います。
2003年のリメイク版については、もう少し工夫すべきではなかったかと思うのです。

コレクターズエディションまで

なんと、画質を可能なかぎり改善して、DVD版がリリースされています。これには正直驚きましたね。まさか、そこまで需要がある映画だとは思っていませんでした。

コレクターズエディションには、未公開のメイキング映像も収録されています。ビデオテープが擦り切れるほどに見尽くした映画ですが、未公開シーンのおかげで色々と謎が解けました。
特典映像の未公開シーンは、映画全体のテンポを落としてしまうという理由でカットされたものですが、なぜ使わなかったのだろうと思えるような出来栄えです。逃走中のミニクーパー3台と、アルファロメオのパトカー3台がリンクで一緒にワルツを踊るというシーンで、車のCMとしても十分使えそうなレベル。
また本編では、下水道管の中でミニクーパーが左右に蛇行するのですが、実は一回転に挑戦していたのだということもわかります。オリジナルでも十分スリリングなのですが、このスタントが成功していれば、さらに迫力の映像になっていたでしょうね。

今でも鑑賞できます

まずはオリジナルバージョンです。私はビデオテープでしたが、なんとストリーミング配信されています。1969年の映画をストリーミングで鑑賞するとは、なんとも受け入れがたいギャップを感じます。もちろん高画質になっていますので、見応えも格段にアップしています。

ミニミニ大作戦 (字幕版)

コレクターズエディションもあります

メイキング映像や未公開シーンも収録されていますので、せっかくでしたらこちらを入手してください。買って損は無いと思います。

ミニミニ大作戦 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

2003年リメイク版

こちらもコレクターズエディションがリリースされていますので、こちらをオススメします。

ミニミニ大作戦 コレクターズ・エディション [DVD]

最後にまとめてみます

いかがでしたか。1969年と古い映画ですが、今でも楽しんでいただけると思います。MINI好きはもちろん、そうでない方でもMINIの魅力がおわかり頂けるのではないでしょうか。MINIの持つ“小さいのにがんばってる感”が前面に押し出されていて、現代ではお目にかかれない楽しさだと思います。そういう意味では、後生に色濃く影響を及ぼしていると言える作品です。
たとえば“ルパン三世/カリオストロの城(79年)”の2代目フィアット500や、“007/ユア・アイズ・オンリー(81年)”のシトロエン2CVなど。頼りなげな小さい車が意外にも小気味よく追っ手から逃れるというシークエンスは、“最初ドキドキ後半痛快”となりますよね。
このような流れの基礎を築いたのは、この作品ではないかと思います。“ローマの休日”のトポリーノも、とても重要な役割を果たしていましたが、また違う趣ですからね。
後半は約30分に渡り、次々とアイディア溢れるカーチェイスが繰り広げられます。息をつく暇もないほどに、あの衝撃的なラストシーンを迎えます。

ランボルギーニ・ミウラ、アストン・マーチンDB5コンバーチブル、ジャガーEタイプなど、高級スポーツカーが登場します。車好きには堪らない内容ですが、結局は惜しげもなく大破されてしまうという娯楽映画の常套手段も、後生に受け継がれていると思いませんか。
さらに、ロンドンのスウィンギングな雰囲気とイタリアの古都トリノ、スイス国境の雄大な景色と舞台を変えるあたり、観光映画としてのエッセンスも満喫できます。
英国60年代の象徴マイケル・ケインといにしえの名優ノエル・カワードが競演し、脇を喜劇役者で固めた配役も絶妙だと思います。
ぜひ、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。