ホイールオフセットって? 操舵性・燃費にも影響する大切な話

愛車のホイール交換、楽しみですよね。カタログを見ながら“どんなデザインにしようかなぁ”なんて悩んでる時間が一番楽しいのではないでしょうか。ホイール選びで“リム径”と“リム幅”は必ずチェックすると思いますが、意外と気にしない“オフセット”についてのお話です。間違うと、操舵性はもちろん燃費にも大きく関わる問題に…。

まずはホイールの基本数値をおさらいします

出典: http://wheel.dunlop.co.jp/rozest/about_wh/
DUNLOP様のホームページより 日本を代表するタイヤメーカー、ダンロップさんのサイトにある画像がわかりやすいので拝借しました。この画の中にあるA〜Iまで、すべて名称がお分かりの方はこの記事を読まなくてよい人です。でも、ひとつでもわからない方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

A:リムの中心線です。
これ自体がなにかを表すことはありませんが、これから説明するいろいろな数値を算出する上で必要になります。ただ、ホイール自体には書いてありませんので面倒なんです。

B:ディスク内面(ハブ面)です。
車に装着する際に、実際に触れ合う部位です。車側でこれに対峙するのが“ハブ”と呼ばれる部位ですので、“ハブ面”と呼ばれることがあります。

C:インセットと呼びます。
これがオフセットのことです。2008年7月から、オフセットを3種類の名称で呼び分けることになりました。そのうちのひとつが“インセット”です。これは通常ミリ表記です。

D:リム幅ですね。
タイヤが勘合する部分の幅を表します。タイヤとの相性が悪いと、タイヤの性能を発揮できなくなるばかりでなく、最悪はタイヤが外れてしまうこともあります。これはインチ表記が一般的です。

E:リム径です。
これもタイヤと勘合する部分の数値ですが、こちらは外径です。つまり、タイヤにとっては内径を意味します。これは間違っていると勘合しないので物理的に危険は起きませんが、間違って用意した場合はどちらかが無駄になります。こちらもインチ表記が一般的です。

F:フランジです。
これは数値ではなく、形状を表記しています。流通しているホイールのほぼすべてが“J”タイプですので、あまり気にする必要がありません。

G:P.C.D.です。
アルファベット3文字の理由は“ピッチ・サークル・ダイアメーター”の略なんです。つまり、“ボルト穴を結んだ円の直径”という意味です。
4穴ホイールの場合は、ボルト穴同士の対角線の長さに等しいのですが、5穴の場合は違ってきますので注意が必要です。これはミリ表記が普通です。

H:ハンブ
コーナリング中など、タイヤに掛かる応力によってタイヤのビードがリムから外れるのを防ぐためにもうけられています。普段はあまり気にしなくてよいのですが、特殊な構造のリムの場合はその形状が明記されています。

I:ハブ径です。
これも車に適合していないと、装着できない場合があります。一昔前は、ホイールボルトを締め付けることでホイールのセンター(芯)出しを行っていましたが、より精度の高いハブセンターの勘合によるセンター出しが主流になりました。これもミリ表記(直径)が一般的です。

これらの羅列がホイールのサイズ

出典: http://wheel.dunlop.co.jp/rozest/about_wh/
DUNLOP様のホームページより 見たことがありますよね。これで、ホイールの各部の寸法が把握できました。これだけのことがわかっても、ホイールのデザインによってはブレーキキャリパーと干渉するケースもあります。さらに言えば、先ほどの“I:ハブ径”が書いてありませんね。これはカタログ上に明記されていて、専用品の場合は品番が決まっています。多くのホイールメーカーは、大きめの穴にしておいて車種別のアダプターを用意していることが多いです。
装着実績のある組み合わせの場合はよいのですが、そうでない場合は必ず仮装着してから購入することをお勧めします。
言い換えれば、装着実績をたくさん持っている=ノウハウが多いショップに相談することが大切です。



それでは本題のオフセットについて

出典: http://wheel.dunlop.co.jp/rozest/about_wh/
DUNLOP様のホームページより 上述したとおり、2008年7月に呼び方が改訂されました。“オフセット”という言葉の意味が本来の使われ方をしていなかったためです。
“オフセット”=“相殺する”とか“差し引き計算する”という意味なのですが、これが転じて“基準点からの差異”という意味で使われていました。
ところが日本以外では通用しない言葉なので、世界基準に合わせることになりました。
ここでいうオフセットは、リム中心線とディスク内面(ハブ面)との距離のことを言います。従来は、これからお話しする“インセット”“アウトセット”“ゼロセット”の3つをまとめて、オフセットと呼んでいたのですが、新たな呼称にそって解説してみます。

インセット

いまやほとんどのホイールが、インセット設定になっています。これは、自動車側の構造がそうなってきているからなのですが、なぜそうするのかは後ほど説明しますね。
リム中心線よりもディスク内面がホイールの外側に設定されているものをインセットと呼びます。数値はミリ表記です。

ゼロセット

言葉から想像できるかもしれませんが、リム中心線とディスク内面が一致している(ずれていない)場合の呼び名です。表記は“0”です。

アウトセット

もうおわかりだと思いますが、インセットの逆、つまりリム中心線よりもディスク内面がホイールの内側に設定されているものをアウトセットと呼びます。数値はミリ表記です。

ちょっとややこしい話

3種類に呼び分けることですっきりしたかのように思えるのですが、これがまたややこしいことになっているのです。
ホイールメーカーによっては、インセット・アウトセットが紛らわしいとか間違いやすいなどの理由から、“インセットに統一表記”というものもあるのです。
例えば、本来は“アウトセット15”を“インセット-15”と表記するのです。ちなみに“ゼロセット”は“インセット0”と表記されます。
確かにインセットとアウトセット、どっちがどっちだっけ?なんてことになるよりは良いのかもしれませんが、インセット=プラス側ですから“インセット”と“マイナス”が同居しているのは違和感がありますね。

もっとも、ゼロセットやアウトセットのホイールはほぼ存在しませんから、あまり気にしなくても良いのかもしれませんね。

オフセット変更で何が起きる?

オフセットが変更されるのはどんなケースでしょう。すぐに思いつくのは、見た目を良くするためにフェンダーとタイヤの面をそろえる、いわゆる“ツライチ”にすることですね。あとは、ディスクデザインによりますが、奥深いデザイン“ディープリム”にするために、可能な限りマイナスオフセットにするケースもありますね。

見た目はOKでも、ハンドリングがNGでは本末転倒というもの。弊害もしっかり理解した上でホイール選びをしてくださいね。

メリットは?

正直に申し上げて、メリットはありません。確実に言えることは、車の性格が変わるということです。この後、デメリットをご紹介しますが、どのようにかわるのかを理解した上であえて狙って変更する場合、それはメリットになりうるかもしれませんね。
ただ、自動車メーカーが計算し尽くした数値を変更することは、基本的にはおすすめできません。

デメリットについて

出典: http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1397347763
上の図を見てください。斜めに引かれた線は、ハンドルを切ったときにタイヤが動く回転中心線です。縦に引かれているのはタイヤの中心線です。一般的に、タイヤの接地面の中心とタイヤの舵角の回転中心はわずかにずらしてあります。
前後の傾きであるキャスター(トレール)も関係してきますので、厳密には回転中心の斜め後方に接地中心が来るように設定されています。これは、FF・FR、ボディ形状、重量配分、用途、などにより、それぞれ最適な位置は違ってきます。
このズレをスクラブ半径と言いますが、ハンドルの手応えや直進への復元性、ブレーキをかけた時の安定性にも関わってきます。ですから自動車メーカーは、時間を掛けて実験&研究して設定します。
実際には、キングピン傾角とよばれるものも複雑に絡んできて、言葉だけでは説明できませんので、スクラブ半径の変化による影響にしぼってお話しします。

ハンドリングへの影響

回転中心より接地中心が外側に来るものを“ポジティブスクラブ”と呼びます。一般的に国産車に多い設定です。この場合、ホイールオフセットを少なくする(ホイールが外側へ移動する)とスクラブ半径が大きくなってハンドルが重くなります。また、ハンドルを放した際の復元性も強くなります。
回転中心より接地中心が内側に来るものを“ネガティブスクラブ”と呼びます。こちらはヨーロッパ車に多い設定です。ホイールオフセットを少なくするとスクラブ半径が小さくなるのでハンドルが軽くなり、復元性は小さくなります。
さらっと書いてしまいましたが、理解できましたか。回転軸からタイヤ接地面の中心が離れると、ハンドルが重くなるのです。その場で向きを変えていたものが、移動円が大きくなるわけですから動かすには余計に力が必要になります。
いまはほぼすべての車にパワーステアリングが装備されていますので、さほど気になることは無いかもしれませんが、車への負担は何倍にも増えるのです。
“復元性が大きくなる”というのは字面だけ見ると良いことのように思いますが、コーナリング中にタイヤが“押し戻される”のですから、決して良いことではありません。

ネガティブスクラブの場合、ホイールオフセットをさらに増やす(タイヤが内側へ入る)と、ハンドルを切った際に勝手に切り込むようになる危険があります。回転軸よりも内側にタイヤがいるので、ハンドルを切っていくと路面からタイヤを内側へ押し込む力が働くからです。

もちろん、そうならないように計算されたスクラブ半径でしたら大丈夫ですが、ホイール交換により数値が変わるといろいろな弊害が出るのです。

ブレーキング時の影響

とくに高速走行時のブレーキングにおいて、ネガティブスクラブのほうが安定しています。ポジティブスクラブの場合は、タイヤを支えているアームの外側にタイヤがあるので、ぶれが大きくなりやすくコントロールしにくい傾向にあります。それをさらにマイナスオフセットした場合、さらにコントロールしにくい状況になるということです。

サスペンションに与える影響

ホイールオフセットを減らす(ホイールを外側へ移動する)と、サスペンションにも影響がでます。タイヤが外へ出る=サスペンションアームが擬似的に長くなるということです。これはわかりますよね。その場合、てこの原理でスプリングを縮める力が増えることになります。アームの付け根の位置は変わらず、スプリングを支える位置も変わらず、接地する位置だけが外へ出るわけですから、サスペンションを縮めようとする力が増えますよね。言い換えれば、スプリングやアブソーバーが力不足になるということです。
少々のことでしたら“乗り心地がよくなる”程度かもしれませんが、あまり変化が大きいと支えきれなくなって“アンダーステア(ハンドルを切った割に曲がらない)”になる危険があります。

物理的に起きる危険

簡単に言えば、ボディなどへの干渉です。
例えばゼロスクラブの場合、接地点=回転の中心ですのでタイヤは前後に移動することはありません。ところがポジティブスクラブの場合、接地点が回転の中心よりも外にいますので、タイヤは前後に移動することになります。これは、スクラブ半径が増えれば増えるほど移動量も多くなります。ホイールオフセットを少なくする(ホイールが外へ出る)とスクラブ半径も増えますので、フェンダーなどへの干渉が起きる危険性があります。ここで気をつけていただきたいのは、停車時にハンドルを切っても当たらないからといって、走行中も大丈夫ではないということです。コーナリング中は外側に加重が掛かり、少なからず沈み込んでいる(フェンダーとタイヤが近づいている)はずですから、よりタイヤとフェンダーが干渉しやすくなっています。
逆にネガティブスクラブの場合、さらにホイールオフセットを増やす(タイヤが内側へ入る)とタイヤハウス内部に干渉する可能性があります。
タイヤの表皮が切れてしまったり、内部のスティールベルトが傷んだりすると、パンクやバーストの危険もあります。

燃費の悪化

これ、お気づきの方は少ないかもしれませんが、ハンドルを切った際にスムーズに向きを変えないということは、無理矢理曲がっているということですよね。その分、車が前へ出ようとする力が余計に必要になりますので燃費が悪化します。
ついでに言えば、タイヤも余分に減りますからタイヤの寿命も縮みますよ。



最後にまとめ

ドレスアップには欠かせないホイール交換ですが、選択を誤るととても危険な結果を招くということをご理解いただけたでしょうか。
もちろん、わずかな変更で車の性格が激変するようなことはありません。ですが、見た目重視で乗りにくくなってしまっては本末転倒と言うべきでしょう。
メカニック時代にはオフセット-70mmなんてとんでもないホイールを見たことがありますが、ハンドルを切るとタイヤが前後に動く様が確認できるほどでした。当然キックバック(ハンドルが押し戻される力)はとてもきつく、加重不足も重なってとても乗りにくい車になりました。
ちなみに私の愛車、ルノーメガーヌRSにはゼロスクラブ設定が採用されていますので、ホイール交換の際にも同一設定のものを選びました。

みなさんも、ホイール交換の際はリム径・リム幅だけでなく、オフセットも吟味してくださいね。