ランチアデルタ 世界ラリー選手権6連覇の実力者

1979年、イタルデザインが担当した端正な5ドアハッチバック車が誕生しました。その名は“ランチア デルタ”。ギリシャ文字の4番目を与えられたこの大衆車は、後にとんでもない偉業を達成します。今もなお生産されていますが、残念ながら日本への正規輸入はありません。デルタの歴史と変遷、現行モデルまでをご紹介。2015年11月更新

はじめに

はじめにお断りしておきます。ランチアが立ち上がってすぐの1911年にも、“デルタ”と言う名前の車がありました。ですが、写真も資料も見つけられませんでしたので、ここでは1979年に登場した新生デルタについて書きます。



現行モデルは3代目

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%BF
現行の3代目ランチアデルタのプロトタイプは、ランチア創立100周年を記念して2006年9月5日のヴェネツィア国際映画祭にて初公開されました。直後のパリモーターショーにも出展されています。
そして、生産型は2008年のジュネーヴモーターショーで公開、同年6月に発売開始されました。
欧州的に言うCセグメントとDセグメントの中間サイズの5ドアハッチバックで、グラスルーフ(グラン・ルーチェと呼ばれる)や2トーンカラーの塗色など、フィアットグループ内で高級路線を担うランチアらしいデザイン処理が行われています。内装もランチアが得意とするアルカンターラやポルトローナ・フラウ製の本皮シートを採用しています。
エンジンは全てターボチャージャー付き(いわゆるダウンサイジングターボ)で、発売当初はガソリン1.4L 120/150馬力、ディーゼル1.6L 120馬力の計3種類でしたが、2.0L ディーゼル165馬力、1.9L ツインターボディーゼル190馬力/ガソリン直噴200馬力仕様も追加されました。
トランスミッションは、いずれの仕様にも6段のマニュアル、シーケンシャル、そしてオートマチックが用意されるという豪華ラインアップです。
新世代電動パワーステアリングの“アブソリュート・ハンドリング・システム”や、“リネアリゼーション・トルク・フィードバック&トルク・トランスファー・コントロール”と呼ばれるトルクコントロール機能が装備され、電子制御サスペンションに加えて縦列駐車を容易にする“セミオートマチック・パーキングシステムや”車線維持システムも装備されています。
米国クライスラーがフィアットグループに参入してからは、クライスラーとランチアを統合する方針が打ち出され、2010年の北米国際オートショーではデルタをクライスラーブランドで参考出品しています。
2011年3月、こんどはランチア版デルタのフェイスリフトが行われ、ジュネーヴモーターショーで披露されたのですが、前述の参考出品車に付けられていたクライスラー風のグリルが採用されていました。
2011年9月、イギリスでクライスラー・デルタの販売が開始されています。ランチアはクライスラー統合以前からイギリス市場を撤退していたため、クライスラーブランドで販売されることになったようです。

日本市場では

神奈川県横浜市のデスティーノが並行輸入しています。

全長:4,520mm
全幅:1,797mm
全高:1,499mm
ホイールベース:2,700mm

エンジン・トランスミッションのバリエーションなどは確認してください。

DESTINO

デルタのデビュー

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%BF
ランチアは、1972年にフィアットに吸収されるまではフルヴィア、フィアットによる吸収後の1972年~1980年にはベータという車種を製造していました。
デルタの発表は1979年です。先代のベータがセダン、クーペ、ステーションワゴン、オープンカー、ミッドシップと豊富なボディバリエーションを持っていたのに対して、デルタは5ドアハッチバックのみの設定でした。
当時ヨーロッパでは、1975年に発表されたフォルクスワーゲン・ゴルフが大きな人気を博していたため、2ボックス車がもてはやされていました。デルタは、フィアットから発売されたリトモに引き続き、この流れに乗るかたちで投入されました。
スタイリングは、ゴルフを手がけたジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインが担当しています。1976年のコンセプトカー“マセラティメディチII”を小型化したスタイリングで、大衆車然としたゴルフと差別化するため、人工皮革のアルカンターラを多用した上品な内装が与えられました。ランチアブランドにふさわしい“小さな高級車”を目指しています。
そのデザインは賞賛を持って迎え入れられ、1980年にランチア初のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを獲得しています。

スペック

ボディサイズ
全長:3,885mm
全幅:1,620mm
全高:1,380mm
ホイールベース:2,475mm
駆動方式:前輪駆動
エンジンバリエーション:横置き直列4気筒
SOHC1.3L・1.5L
DOHC1.6L・1.6Lターボ
1.9Lターボのディーゼル



バリエーション

ボディは5ドアハッチバックのみの設定ながら、エンジン及び駆動別のバリエーションが多いのが特徴です。

タイプLX

いわゆるスタンダードモデルです。
1.3Lと1.5Lのガソリンエンジンを採用。1.5には3速A/Tの設定もありました。

タイプGT

1.3L、1.5L、1.6L DOHCのエンジン設定があり、アルカンタラ内装も選べる上位モデル。

タイプTD

欧州車のは必須のディーゼルエンジンバリエーションです。
1.9Lターボディーゼルエンジン搭載で、最高出力は80PS/4,200rpm、17.5kg-m/2,400rpm。

HFターボ

当時としては相当なホットモデルです。ゴルフGTiの対抗馬だったのかもしれませんね。
130PSのDOHC 1.6Lターボエンジンを搭載。

S4 ストラダーレ

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%BF
1985年当時の世界ラリー選手権であった“グループB”のレース用車両であるS4の出場権獲得(ホモロゲーション)用の市販モデルです。
実は、エンジン、シャシ共にデルタとは全く関連性がありません。デルタの販売促進のためにデルタによく似たデザインにななりました。
全長4,005mm×全幅1,800mm×全高1,500mmのボディで、ホイールベースは2,440mm。
1.8L 4気筒DOHCスーパーチャージャー+ターボのガソリンエンジンをシャーシ中ほどに縦置きし、4輪を駆動するミッドシップフルタイム4WDです。

HF 4WD

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%BF
1986年に廃止されたグループBに代わり、世界ラリー選手権となったグループAのレース用車両のホモ路げーション用の市販モデルです。
ファミリーカーであるデルタに、167PSのDOHCターボエンジンとトルセンセンターデフをによるフルタイム4WDを搭載したスポーツモデルです。
ヘッドライトが丸形4灯となり、徹底して冷却を意識したフロントグリルと空力を意識したスポイラーなどが特徴です。

HF インテグラーレ

HF4WDが“HF インテグラーレ”にバージョンアップしました。
フェンダー形状がブリスターフェンダーと呼ばれる張り出したものになり、ファミリーカーの見た目からスパルタンに変身しました。
最高出力は185ps/5300rpm。

HF インテグラーレ16V

“インテグラーレ”の4気筒DOHC2.0Lターボエンジンを16バルブ化し、最高出力を200PSにスープアップ。これに伴いそれまでのモデルは“8V”と呼ばれるようになりました。
大型化したエンジンとのクリアランス確保のため、ボンネットは盛り上がった形に変更されています。
このモデルからライト周辺にも通気穴が開けられ、フロントバンパー周辺にも可能な限りの通気穴が開けられました。これはWRCへの対応策です。
駆動系も、FF寄りだった駆動配分をFR寄りの前44:後56に設定し直し、拡大したトレッドと短いホイールベース、インチアップしたタイヤなどと相まって回頭性とコーナリング性能が大幅に向上しています。

HF インテグラーレ16V エヴォルツィオーネ

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%BF
エボリューションモデルである“HFエヴォルツィオーネ”が登場しました。
各部の改良強化とともにボディデザインが大幅に変更され、最高出力は210PSになりました。車体剛性が大幅に向上しています。
リアドアパネルと一体化されたブリスターフェンダーが外観上の特徴(エヴォルツィオーネ以前はブリスターフェンダーとドアパネルは溶接)です。
このモデルから、日本で言う“3ナンバーボディ”です。足周りではピロボール式リンクなどの装備が搭載されています。
足回りを5穴ハブに変更、角度調整のできるリアスポイラーの標準装備など。
ボンネットの張り出しはさらに拡大し、ボンネット前部左右に更に小型のエアスクープが追加されています。
フロントブリスターフェンダーの後ろ側には、ブレーキ周りの熱を効率よく排出するためのダクト(市販車ではダミーパネル)まで追加されています。

世界ラリー選手権5連覇の記念として、マルティニカラーストライプの限定車“HFインテグラーレV”が発売されました。
後にダークグリーンメタリックの“ヴェルデ・ヨーク”を発表(日本には未導入)。

HF インテグラーレ16V エヴォルツィオーネII

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%BF
ジアッラ 1993年、すでにデルタのモデルチェンジが決定してしましたが、完全な独立モデルとして継続販売されました。それほど人気があったということです。ただ、ラリーへの参戦はありませんでした。
燃料噴射をシーケンシャル化することで、最大出力は215PSまでになりました。エヴォルツィオーネと同形状のホイールですが、15インチから16インチに拡大変更されています。
1994年、黄色いボディで220台限定の“ジアッラ(黄色)”と青メタリックに黄色のピンストライプの“ブルー・ラゴス”(台数は215台)を発売しました。内装色はどちらもベージュ。
1995年、最終ロットの限定車“ディーラーズ コレクション”と、日本市場向け“コレッツィオーネ(コレクション)”を発売。
実はコレッッツィオーネの正式名称は、ランチア・デルタ・アッカエッフェ・インテグラーレ・エボルツィオーネ・ドゥエ・コレツィオーネ・エディツィオーネ・フィナーレです。
紅の車体の上面に、ランチアカラーの青と黄色のストライプを配した独特のカラーリングです。
コレッツィオーネの販売台数は当初200台の予定でしたが、多くの受注に対応し250台へ変更されました。 出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%BF
コレッツィオーネ

2代目

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%BF
1993年、先代デルタの後継車種として登場しました。
フィアット・ティーポ同様、ティーポ2/3プロジェクトのひとつです。
つまり、フィアット・テムプラやランチア・デドラ、アルファロメオ・155とは基本構造は同じです。
ボディは5ドアハッチバックと3ドアハッチバック。
全長4,011 mm×全幅1,703 mm×全高1,430 mm、ホイールベース2,540mm。
エンジンは全て4気筒で、SOHCの1.6L、DOHCの1.6L、1.8L、2.0L、2.0Lターボのガソリンエンジンと1.9Lターボのディーゼルエンジン。すべてFF方式です。内外装ともにイタリアのデザイン会社I.DE.Aが担当しました。
先代デルタの印象があまりにも強かったのと、先代のイングラーレが継続販売されていたため、その陰に隠れてしまった感があります。

HF モデル

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%BF
先代同様に“HF”というスポーツモデルがあり、ボディ形状が異なります。
フェンダーが張り出し、全幅が1,759 mmです。

最後にまとめ

初代デルタの活躍は、日本でもラリー熱が上がっていた時期でしたので、多くのラリーファンを魅了しました。新型にスイッチしたあともエボリューションモデルが継続生産されるというのは前代未聞のことですから、相当な人気だった(というか惜しむ声が多かった)ということですね。

私のメカニック人生のど真ん中にラップしていますので、多くのデルタをメンテナンスしていました。とにかく苦労させられた記憶しかありませんけど。
そもそも1.3L~1.5Lクラスのエンジンを積むファミリーカーに、2.0LDOHC16バルブターボ+4WDを載せてしまったのですからもう大変です。パワーアップに合わせてボディは補強出来ていましたが、とにかくスペースが無いんです。
あたかも“寸法を測ったらなんとか収まりそうだから入れてしまった”と言わんばかりの絶妙なクリアランスで、タイミングベルトを交換するにもエンジンを降ろした方が作業しやすい車でした。
さすがにラリー参戦用の車輌ですので、エンジン&トランスミッション(今風に言えばパワーユニットですね)を車から降ろすことを考慮した設計がされていました。
いっぱいいっぱいに詰まったエンジンルームでは熱対策が大変で、常に電動ファンが全開で回っていたイメージがあります。
動力性能は“本物”で、加速や回頭性能は目を見張るモノがあります。ブレーキも猛烈に効きますから不安はありませんが、公道ではすぐに危険な領域に突入してしまいますので、右足の理性が強く求められます。