ルノー21はフランス語で“ヴァン・テ・アン”って読むんです。

ジウジアーロデザインで4ドアセダンのヴァン・テ・アン。とりたてて拾いどころのない中型セダンに見えますが、そこは流石ルノーと言いたいですね。しっかりとやらかしてくれているのです。「なんでこうなったの?」って言いたくなる“仕込み”が盛りだくさん。みなさん、楽しんでいってくださね。

こんな車です。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%BB21
“いかにもジウジアーロ”ですよね。“ザ・ジウジアーロ”という感じです。直線で構成されたボディラインは、実はひとつとして平行な2本は存在しないのです。このあたりがジウジアーロの凄さですね。ボンネットの長さとキャビンの大きさとのバランスや、パネル面積とガラス面積との比率まで気を遣ってありますね。
デビューは1986年。4気筒SOHC1,400cc、1,700cc、2,000cc、2,200ccのガソリンエンジンと、1,900cと2,100ccのディーゼルエンジンがラインナップされました。
オーソドックスな4ドア3ボックスセダンのボディは、居住性の良さがウリのコンサバな車でした。

ボディバリエーション

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%BB21
セダンのデビュー後すぐにステーションワゴンの“ネヴァダ(Nevada)”が追加されました。先代のR18は室内の狭さが不評だったため、ホイールベースを約200mm伸ばしてクラス随一の室内空間を実現しました。
1989年には、アウディ80やプジョー405などのライバルの出現により販売が落ち込んでいたヴァン・テ・アンは、マイナーチェンジを受けてフェイズ2へと進化しました。ヘッドランプ周りとテールランプ、空調操作部などの意匠が大きく変更されました。同時に5ドアハッチバックと四輪駆動の“クアドラ”が追加されています。
ハッチバックモデルは、フランス国内ですぐにセダンを追い抜いて1番の売れ筋モデルになります。クアドラには、ビスカスカップリングが採用されているという熱の入れようです。

1994年に後継モデルとなるラグナが発売され、4ドアセダンと5ドアハッチバックは生産を終了しました。ステーションワゴンのネヴァダはラグナ・ワゴンが登場する翌年まで継続生産されました。
総生産台数は、2,096,000台(セダン1,684,000台、ワゴン412,000台)と、なかなかのヒットモデルとなったのでした。

仕込みポイントは

少々マニアックな話ですが、ヴァン・テ・アンはエンジンバリエーションのすべてがFFレイアウトです。FFには違いないのですが、一部のエンジンでは縦置きレイアウトのFFなのです。
これは、当時のルノーには大排気量エンジンの発生トルクを受け止められる横置きトランスミッションが無かったためだと言われています。上位モデルは縦置きレイアウトでした。
これに対応するために、ヴァン・テ・アンのエンジンルームは、縦置き・横置きの両方に対応できる構造になっています。縦置きと横置きではホイールベースが60mmも違うのです。



ヴァン・テ・アンを楽しくしてくれたのは

出典: http://www.autoevolution.com/cars/renault-21-sedan-1989.html#agal_2
正直に言って、特にこれといって取り柄のない普通のセダンだったヴァン・テ・アンに、稲妻レベルの衝撃が走るモデルが追加されたのです。
その名も“RENAULT 21 TURBO”。デビューは1987年です。
スマートと言えば聞こえが良いですが平凡だったヴァン・テ・アンのスタイルを、スポイラーとエアロパーツで武装して、空冷インタークーラーを装備したギャレット製T-3(!)ターボチャージャーを載せてしまったのです。
その結果、SOHC2,000ccながら175ps&27.5kgmを叩き出すモンスターマシンになりました。今でこそ当たり前以下の数字ですが、当時としては類を見ないスペックだったのです。
BMW M3や、メルセデスベンツ190E 2.3-16などと対等とまで言われました。
ヴァン・テ・アン・ターボの開発には、旧アルピーヌ(現ルノースポール)が携わったと言われますから、あながちオーバーな話ではないのかもしれません。

フレンチロケットの異名を持つ

ヴァン・テ・アン・ターボはエアロパーツが付いているとは言え、ずいぶんと控えめな印象の外観。でも、日本人はこの手のモディファイが大好きですよね。
当時から“羊の皮を被った狼”という言葉がありましたが、ヴァン・テ・アン・ターボもまさにその比喩に当てはまる車でした。
欧州では“ロケットのごとく加速するフランス車”ということで“フレンチロケット”の異名をもつほどです。各国でオーナーズクラブが存在するほど多くのファンに支持されています。

“どっかんターボ”

この言葉、ご存知でしょうか。現代“ターボ”と言えば、ダウンサイジングターボが流行りです。そうでなくても、少し前から“小排気量のトルクを補う”ためのトルクアップターボがメジャーになりました。低回転からスムーズに働き、あたかも1クラス上の排気量エンジンのように動きます。
ですが、当時のターボは少々設定が違いました。
そもそもターボチャージャーというのは、エンジンの自然吸気以上に空気を送り込むための技術です。ターボの過給(詰め込み)が高くなると、エンジンの圧縮比が高くなります。むりやり空気を詰め込むのですから当然ですよね。そのためターボ付きのエンジンは、もともとの圧縮比を低く設定されていました。
そのおかげで、ターボが働き始めるまではパワーもトルクも少ないのです。そこへターボの加給が始まると、ものすごい勢いで加速していきますので“どっかん”と名付けられたのです。
3,000prmを超えるころまでは“モタ~”と走り出すのですが、4,000rpmを超えたあたりからブーストメーターが暴れはじめ、“キーン”というメカノイズとともにぐんぐん加速していきます。
これぞ“どっかんターボ”の由来なのです。

くせになる

メカニック時代には、メンテナンスを任せて頂けるオーナーさんがいらっしゃいましたので、何度も乗る機会がありました。
上述した通りどっかんターボの威力は格別で、麻薬のような常習性をもっています。こうして書いているいまでも、すでに乗りたくなっています。
ボディ剛性がしっかりした印象で、グイグイ加速していくのが怖くないのです(それはそれで問題かもしれませんね)。
ホイールベースが長めですので、タイトコーナーが続くようなシチュエーションでは少々苦労します。
またFFですので、どっかんが効いている最中は極度のアンダーステアを発揮します。
扱い方を身につけてしまえばとても楽しくドライブできる車ですので、市場で見つけたときには是非お試しください。
超レアですが“ターボクアドラ”なんていうモデルも存在するのです。