かわいいブルドッグ「フォルクスワーゲン・タイプ2」のこと、知ってますか?

CMなどでもお馴染みの「フォルクスワーゲン・タイプ2」。古いクルマですが、今でもいろいろな場面で見かけますよね。「Bulli(ブルドッグ)」愛称で呼ばれることもあるタイプ2ですが、しってるつもりで余りよく知らないという方も多いかな? と思います。今回は、このBulliについて調べてみました。

いろいろな呼び名のあるタイプ2

タイプ2、「ワーゲンバス」と呼んでいる人もいるかな? と思います。実は、いろいろな呼び名があるクルマなのです。冒頭で書いたように「Bulli」と言うのはドイツや周辺国での呼び方ですし、アメリカでは「Type2」、タイプ2とは「2型」の意味で、フォルクスワーゲン社での型式名称であり、ドイツ語ではテュープ ツヴァイ(Typ 2)となる。タイプ2という呼び名は、1960年代の北米で広まり、現在では、主に専門家や愛好家による愛称となっている。ドイツ本国や周辺諸国においては、Bulli(ブリ:ブルドッグの意)の愛称で親しまれている。フォルクスワーゲン自身は、貨物仕様をTransporterやDelivery Van、多人数乗用仕様はVW kleinbus(マイクロバス)、簡素な内装の乗用・貨物兼用のものはKombi(コンビ)、後部がトラックタイプならPick-up、そして総称が「Type2」と英語の名前が使われていたりします。日本では、先ほど書いた、「ワーゲンバス」の他にも「サンババス」や「デリバリーバン」と呼ばれることもあるのです。今回は、なるべくタイプ2に統一しましょう。



タイプ1の次の車種なので「タイプ2」です

タイプ2は、タイプ1ベースの汎用車両として1950年に登場しました。「タイプ1」? ワーゲンビートルはタイプ1なのです。その次なのでタイプ2なのです…。タイプ2とは言え、最初のシリーズがT1からはじまり、T5が現在も作られ続けています。途中、生産拠点がブラジルに移されもしましたが、モデルチェンジを続けながらも既に60年以上の歴史があるクルマなのです。

今日は、その中でもT1〜T2まで、つまりT3カラベルが登場するまでまでを中心に書いていきますね。

オランダ人ディーラーの発想が産んだ名車タイプ2

先ほども書いたようにタイプ2は、ビートルをベースとした汎用車両です。基本コンポーネントを共有しながら全く違う車種を作ることはよくあることですが、Type2が生まれるときにはちょっとした逸話があります。ビートルがはじめての輸出先として隣国のオランダに決まった時、仲介業者のオランダ人ディーラーがワーゲンの工場を訪問します。当時のワーゲンの工場では、不思議なクルマが工場内の輸送用車両として使われていました。それは自動車のエンジンがリアに置かれたシャーシに、ドライバーシートをエンジンの上に乗せ車体の前方は貨物スペースというシロモノでした。オランダ人ディーラーは、そのシャーシがフラットな構造になっていること、そしてそれを活かせば非常に効率の良いボディが作れるのでは無いかと発想したのです。実は、このシャーシがビートルのものだったのです。実際、このシャーシは第二次大戦中にもドイツ軍の名車、万能車として有名なキューベルワーゲンや水陸両用車シュビムワーゲンなど軍用の改装されながら使いまわされていたものだったので、オランダ人の着眼点は間違っていないのです。

そして、1947年4月23日に、フルキャブオーバータイプのワンボックスバンのボディがビートルのシャーシに載せられた手書きのラフスケッチが描かれます。もちろん、その作画はオランダ人ディーラー「ベン・ポン」によるものです。

素人のデザインが、歴史に残る名車に

ポンはデザイナーでもエンジニアでもなく、純粋なカーディーラーです。そんな彼が描いた絵が今も愛される形になるとは、ポン自身も考えていなかったでしょうね(似たような事例はジープにもあるようですが、他には…無いようです)。

ポンは自分のアイデアをワーゲンの経営者に提案します。その提案はワーゲンにとってもType1以外のラインナップが必要だと考えたワーゲンにとっても受け入れやすいものでした。こうしてトントン拍子に開発がはじまり、1949年にプロトタイプが完成してしまいます。

レイアウトはポンのアイデアがほぼ踏襲され、それ以外に汎用車両として必要な荷重に対する強化が施されます。そして、スペース効率を最大限に上げたボディを載せたのです。このことで、ビートルとほとんど同じ全長でありながら、特にシートの工夫をしなくても3列シートがおける床面積が確保できています。

ただ、ちょっとした弱点として、後部背面はエンジンルームへのアクセスハッチに使わているため、ラゲッジスペースのためには使用できません。その変わりサイドドアを広くすることで対応しています。

タイプ2、ついに発売

タイプ2T1は、1950年の発売と同時にドイツだけではなくヨーロッパ全体で高い評価を得ます。ビートルで実績を積んだシャーシやエンジンは丈夫さに定評がありましたし、おまけに汎用性はディーラー自身が描いたことで机上の空論ではない説得力があったのでしょう。またボディも小さいので取り扱いも楽ですからヨーロッパの市街地の狭い道路にも適応しやすかったことも理由だと思います。

更に、大きいことが正義のような当時のアメリカ市場でもタイプ2は人気を得てしまいます。その理由は、やはり小型の輸送車として競合が余り存在しなかったこと、そしてビートルの実績から丈夫で取り回しの良い配達車としての便利さが認められたからだそうです。

この欧米市場での成功は、ワーゲンにとってもとても大きな出来事でした。ポンの提案を受けた経営者が考えたとおり、ビートルだけでは乗用車市場にしか参入出来なかったのに対し、タイプ2の登場、そして成功で汎用車、つまり様々な車種としての市場にも参入可能になったからです。この何でも屋的な性格が幸いして、ピックアップや救急車などのバリエーションも揃えることが出来ましたし、それぞれが一定のシェアを占めることに成功しています。ちなみに日本への輸入も1953年にはじめられています。



1967年、ついにモデルチェンジ。タイプ2「T2」登場

T1の後継としてT2の生産がはじまったのは、17年後の1967になってからです。このT2は、規制の関係もありアメリカ市場を強く意識したモデルチェンジを行っています。

1. 排ガス規制対応:マスキー法と呼ばれる厳しい排ガス規制への対応が行われました
2. AT開発、搭載:既にアメリカでは市場の確立していたトルコンATが求められていました

また、シャーシやリア置きエンジンなど基本的な構成はポン発案のT1を踏襲しているものの、他にも幾つかの変更が行われています。

1. 全ウインドウが大型化され、視界の改善が図られました
2. インテリアに樹脂製部品が多用されています
3. ボディーカラーがおなじみになったツートンカラーから単色に変更されました

この変更から以後、2回にわたって細部が変更され「初期型」「中間型」「後期型」に分類されています。ちなみにT1はウルトラセブンにも登場しましたし、T2はバックツーザフューチャーに登場しています。

2回あったT1、T2の生産終了

T2の生産は、ドイツで1979年まで続けられ、T3に移行します。しかしT2は、1975年からブラジルでの生産が開始されていて2013年まで続けられました。実は、T2の生産をはじめるまでブラジルでは1953年からT1を作り続けていましたので、60年にわたってT1とT2を作り続けていたことになります。そしてT3としてカラベルが1979年に登場してもなお、生産が続けられていたのですから、シャーシの基本設計の優秀さもさることながら、T1をほぼ踏襲したデザインがどれだけ持続的な人気になっていたかが判る事実ですね。 【基本情報】
車種名:フォルクスワーゲン タイプ2(T1)
総排気量:1192cc
最高出力:34ps/3500rpm
駆動形式:RR
全長:4290mm
全幅:1750mm
全高:1940mm
車両重量:1095kg

まとめ

「どちらかと言えば、T2よりもT1の方が良いな」と思うのは私だけでは無いと思いますが、あのデザインが専門のデザイナーが描いたものではないとは驚きでした。それだけに自由な発想と実用的なアイデアがバランス良く取り込めたのかもしれません。今でもCMだけではなく、街なかを走る姿や、動かなくなってもカフェなどのスタンドとして使われている姿をみると、なんとなくホッとするタイプ2。ただ一つだけなっとく行かないのは、どうして「Bulli」なんて愛称をつけたのか? ということだけです。