【ランボルギーニミウラ】世紀のスーパーカーのデビューは丸裸だった?

40代後半~の方ならご理解いただけるでしょう。“ミウラ”と聞いただけで落ち着きを無くしてしまうことを。その美しいスタイリング。その官能的なサウンド。そして、そこにいるだけで他を圧倒するオーラ。ミドシップと言われてもよくわからなかったけど、“エンジンが後ろにある!”ということだけは理解していたあの頃を思い出してください。

ランボルギーニミウラという車

ご存じない方や思い出せない方のために、まずは画像をご覧いただきましょう。 出典: http://www.lamborghini.com/jp/%E6%AD%B4%E5%8F%B2/1965-1966/
どうですか、この美しいフォルム。同年代のスーパーカーたちはどれもひけをとらない美しさですが、やはりミウラは格別なんです。
“なぜ?”って聞かれても困るのですが、いろいろと思いつくところを考えてみましょう。

ミウラの特別 その1 デザイナー

この美しいデザインはイタリアのカロッツェリア、ベルトーネです。
ミウラのデビューは1966年。60年代のベルトーネと言えば、ジョルジェット・ジウジアーロを思い浮かべますが、実はジウジアーロは1965年にギアへ移籍しています。
ジウジアーロの後任として招かれたのは、マルチェロ・ガンディーニでした。
つまり、ランボルギーニ・ミウラは、ガンディーニにとってベルトーネでの最初の作品です。
ランボルギーニのミウラ構想があと半年早かったら、ジウジアーロの移籍があと半年遅かったら…もしかしたらミウラはまったく別の、無数の楕円で構成されたデザインになっていたかもしれません(それも見てみたいですが)。
そう思うと、ミウラの誕生は奇跡的とすら思えるのです。

ミウラの特別 その2 ミドシップレイアウト

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%82%A6%E3%83%A9
今でこそミドシップと言われても“そうなんだ”というレベルですよね。もちろん割り切った感はありますが、スポーツ性能を突き詰めればそれも致し方ないと思えます。
ですが、1960年代半ばにミドシップと言えばフォーミュラカーくらいしかありませんでした。
市販車では小排気量のミドシップは存在しましたが、4リッター級V12エンジンをミドシップレイアウトにした例はありませんでした。
しかも、そのV12エンジンを横置きレイアウトしているのですから驚きです。ミウラに端を発し、大排気量のミドシップスーパーカーが続々発表されますが、それらはみな縦置きレイアウトです。
フェラーリ・ディノ246GT(206GT)は横置きミドシップですがV6エンジンですし、その後も横置きレイアウトはスモールフェラーリと呼ばれるV8モデルだけで、V12シリーズはすべて縦置きレイアウトです。
これについては、ランボルギーニも“横置きは難しい”と判断したのでしょう。後継車であるカウンタックは縦置きレイアウトです。

ミウラの特別 その3 デビューのインパクト

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%82%A6%E3%83%A9
1965年11月に開催されたトリノ・オートショーに、シャシとエンジンのみの試作モデルが展示されました。これがミウラの原型です。
ボディーが無いばかりか名前もまだついていなかったそうです。当時ミッドシップエンジンは、マトラ・ジェットとデ・トマソヴァレルンガ(どちらも小排気量のコンパクトスポーツカー)くらいで、他のメーカーではFRレイアウトが通常でした。
60年代後半からスポーツカーレイアウトの標準となりますが、これはあきらかにミウラがきっかけと言えるでしょう。ある時ランボルギーニ総帥フェルッチオは、TP400(シャシとエンジンだけのミウラ)をモナコのとあるカジノの駐車場に置きました。非常に珍しいエンジンレイアウトのこの車は、ボディが無いにも関わらず富豪たちの視線を釘付けにしました。さんざんみせびらかした後にエンジンをかけると、群がる人の数は倍にもなったといいます。

ミウラの特別 その4 サウンド

出典: http://sudacolumn.cocolog-nifty.com/typer/2005/09/post_57d5.html
ミウラのカウルはこんな風に開きます。リヤカウルの下に注目してください。なにやらメッキの部品がカウルについて下を向いていますよね。これ、マフラーカッターなんです。
マフラーをボディ後方まで延ばすとカウルの開閉と干渉してしまうため、カウルヒンジの真下でマフラーが寸断されています。
そのマフラー先端にかぶるようにマフラーカッターがカウルに取り付けられているんです。
この排気管の継ぎ目で排気ガスの流れが乱れ、咆哮のような排気音を作り出しています。理由を聞くと微妙な内容なのですが、その排気音はとてもワイルドに仕上がっています。

ミウラの特別 その5 名前

ミウラ以前のランボルギーニは、排気量がそのまま車名になっていました。350GTVとか400GTなど。ミウラはランボルギーニにとって数字から脱却したモデルです。
ではこの“ミウラ”という名前、どのような由来なのでしょうか。
実はこの名前、著名なスペイン闘牛飼育家ドン・アントニオ・ミウラ氏にちなんで命名されました。フェルッチオとミウラ氏は大親友なのだそうです。そして、これ以降ランボルギーニ車には闘牛関連の車名がたびたび登場するのです。イスレロ、エスパーダ、ディアブロ、レヴェントン、ガヤルドなど。



ミウラの発展

ベアシャシのお披露目から半年足らずの1966年3月、マルチェロ・ガンディーニデザインのボディを纏ったミウラはジュネーブショーで発表されました。その流麗なスタイリングが注目の的となり、すぐに100を越えるオーダーが殺到したのです。
1967年には一応の生産体制を整えましたが、その時点ではまだリアヘビーによるハンドリングの欠点、パワートレーン系が出す盛大なノイズ、冷却性能、さらには容赦なく車室を襲う熱や爆音などいくつもの問題が解決していませんでした。
たくさんのバックオーダーを抱えたランボルギーニは、改良しながら生産を続ける道を選びます。

フェルッチオ・ランボルギーニは「ミウラはショー・カーであり、ランボルギーニの他の車の販売促進に役立てばそれで充分」、「生産は30台程度」と考えていたようです。
市販車として考えられていなかったミウラの当初の完成度は決して高くはありませんでした。ランボルギーニの公式な区分としては“P400(ミウラ)”、“P400S(ミウラS)”、“P400SV(ミウラSV)”と3つの時代に区切られてはいますが、実際はその全期間を通じて一台生産するごとに完成度を高め、現在に残る名声を勝ち得ているのです。言い換えれば変更は毎回なされていて、それは機能改良ばかりでなく不都合の修正もありました。イタリアの小規模メーカーではよくあることですが、同時期作られた“エスパーダ”の完成度は高くこのようなことはなかったようです。
SVは公称385psを謳っていますが、現実には310ps程度だったといわれています。

初期型 P400

出典: http://www.remarkablecars.com/main/lamborghini/lamborghini-miura.html
市販車として販売されるまでに何度も変更を繰り返したミウラですが、顧客から一刻も早いリリースを望まれ、それに押される形でサスペンションセッティングなどを大まかに決めた状態で生産を開始してしまいます。エンジン&トランスミッションをコンパクトにまとめるため、潤滑系を共有している (初代ミニや殆どのモーターサイクルと同じ構造)いわゆる“イシゴニスレイアウト”です 。
このためにリミテッド・スリップ・デフの採用が見送られました。結果的に高速走行時にはフロントの落ち着きに欠け、コーナーでは急激なリバースステアに見舞われることもあったようです。
販売車輌の最初の一台は、1967年3月に製作されたもので、名前はP400とされました。PはPosteriore(後ろの意)”でエンジンが後ろに位置していることから。400は排気量4L(3,929cc)を表します。
350psのエンジンで、1,075kgの車体を最高速度290km/hまで引っ張ります。当時のランボルギーニはまだ風洞実験ができる規模ではありませんでしたが、ニュージーランド出身の開発テストドライバー、ボブ・ウォレスが大いに貢献しています。
彼は21歳でイタリアに渡り、ランボルギーニに来る前はフェラーリやマセラティでレーサーとして活躍していました。

外観からはブラックに仕上げられたウインドシールドモールが、後の“S”と見分ける唯一の違いです。
ランボルギーニ・ミウラは扱いにくいことで有名ですが、メンテナンス・サービスだけは別でした。大きく開くカウルはとても作業性に優れ、ベルトーネの設計はこの点がよく考えられていたと言えます。1967年に約110台(108台とも111台ともいわれています)、そして1969年までに計475台が作られました。

改良版 P400S

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%82%A6%E3%83%A9
ミウラの絶え間ない改良は続き、1968年12月には370psまで出力をあげた“P400S”となりました。
SはSpintoで、直訳すると「押された」という意味ですが、「チューンされた」という意味で使っています。実際は公式発表の馬力ほどはでなかったようですが、エンジン強化の結果ドライバーにとってその騒音と熱にさらに悩まされることでもありました。
等速ジョイントとベンチレーテッド・ディスク・ブレーキが装備され、さらにモデル途中でリアサスペンション強化もありました。
インテリアはオーバヘッドコンソールの形状変更とパワーウィンドウの装備、エアコンもオプションながらモデル途中で用意されましたが、あまり効かなかったようです。外観はウインドシールドのモールやヘッドライトのリムがブラックアウトからクロームになりました。
生産台数は140台。

最高性能版 P400SV

出典: http://www.netcarshow.com/lamborghini/1971-miura_sv/
1971年3月のジュネーブショーでは385psまで出力を上げたP400SVが登場しています。SVはSprint Veloceで「より速い車(にチューンされた)」という意味で使っています。
絶え間ない変更により、当初の設計目的がこのSVでやっと実現できました。SVこそ本物のミウラであり、現在における市場での取引価格もそれを示しています。
インテークを大きくし、キャブレターを変更、カムタイミングも変更してこの出力が達成されました。リアサスペンションがさらに強化され、リアは9Jホイールとなりピレリのチンテュラート(CINTURATOラジアル)を履いました。あわせてリアフェンダーもワイドになって、より攻撃的な印象に変貌しています。
外見の変更は、“まつげ(ヘッドライト周りのグリル)”がなくなってシンプルになっていることです。その下のフロントグリルも横長の楕円状だったものが、Sより口元を少し窄(すぼ)めた感じに変更されています。あわせてターニングランプも変更されました。
リアのコンビネーションランプにバックランプが組み込まれています。
ようやくエンジンとミッションの各潤滑系が分離され、オプションでLSDが用意されました(実際に装備されている車は少ないです)。
約150台が生産された。うち一台はフランク・シナトラが購入しています。
1973年10月製造の最後の車両の車体番号は4822で、ミウラ全体の生産台数は750台程度。

蘇ったミウラ

出典: https://en.wikipedia.org/wiki/Lamborghini_Miura_concept
2006年1月に開催されたデトロイト・ショーで、ランボルギーニレトロコンセプトプロジェクトの第一弾となるミウラ・コンセプトが披露されました。
ミウラの生誕から40周年を迎えるにあたって、それを記念する意味を込めてコンセプトカーをクリエイトしたのです。基本的なシルエットはオリジナルミウラのデザインを踏襲したもので、ランボルギーニ・チェントロ・スティーレ(デザインセンター)のチーフデザイナーである、ウォルター・デ・シルバが担当しています。
見るからに懐古的な作品ですが、フォードGT40の現代版であるフォードGTが販売面で成功を収めたのをうけて、このミウラ・コンセプトが生み出されたのでしょう。現代的な解釈のデザインで、見事ミウラを甦らせました。
あくまでコンセプトカーということで、ボディディメンションやパワースペックなどは一切公表されていません。何よりも気になるのは、これが市販化されるか否かでしょう。
まだ生産にはほど遠い段階ながら、販売される可能性はかなり高いと言われていました。ただしオリジナルのミウラよろしくV12エンジンを横置き搭載するには無理があります。フォルクスワーゲン・グループのW12ユニットを横置きするという噂もありますが、ボディサイズを大きく拡大するか縦置き搭載するのが無難でしょう。
ムルシエラゴのV12エンジンの排気量を増やして、700psまでパワーを高めたユニットに7速DSGを組み合わせるという憶測が飛び交い、現代版ミウラはスーパースポーツカーとしても相当魅力的な性能を与えられそうです。



最後に

ミウラの素晴らしさ、伝わりましたか?
ミドシップなのにロングノーズ、その秘密は横置きミドシップだったんですね。幼い頃に各地のスーパーカーショーに飛び回りましたが、規模が小さいとミウラはいないんです。代わりにウラッコやシルエットがいましたね。1,800mm近い幅とミドシップの恩恵である低いノーズのおかげで“ぺったんこ”な印象を強めます。“そこにいるだけでそわそわしてしまう”、ミウラはそんな車なのです。