フィアット124スパイダー あの人気モデルをベースにした待望のオープンモデル

人気のオープンモデル、マツダ ロードスターのフィアット板として注目を集めている、124スパイダー。このクルマの成り立ちから、ルーツとなった昔のモデル、さらに期待のアバルト版などをご紹介します。さらに、ヨーロッパのオープンモデルの文化をその呼び名からたどってみます。

2016年から、いよいよ販売スタート

出典: http://www.fiat.it/124-spider/anniversary
フィアット124スパイダー 50周年アニバーサリーモデル

初代のデビュー50周年を記念して登場

2015年秋、フィアットから新しいオープンモデル「フィアット124スパイダー」が発表されました。「124」は1966年にデビューしたフィアットの小型車のシリーズで、そのデビュー50周年を記念するモデルとして位置づけられています。発売は2016年から、本原稿作成時(2016年1月)は発売日は発表されていませんが、本国イタリアやアメリカのフィアットのウェブサイトで確かめることができます。

Fiat 124 Spider – Il ritorno di un'icona | Fiat
フィアット 124スパイダー サイト(イタリア語)

2017 FIAT 124 Spider – Seductive Italian Design
2017 FIAT 124 Spider the Italian roadster that will tempt your senses and reignite your love affair with driving. Sign up for 2017 FIAT 124 Spider updates. 北米フィアット 124スパイダー サイト

ベースは、マツダ ロードスター

ご存じの方も多いと思いますが、このニューモデルは、実は日本車のマツダ ロードスター(ND型)をベースに作られたクルマです。海外メーカーから依託されて日本メーカーが生産するモデルは実はこれまでもあり、例えばプジョーのクロスオーバーSUV「4007」は、三菱自動車の「アウトランダー」をベースに生産されています。

124もそれと同様の生産スタイルですが、異例なのは、それがスポーティカーだということです。スポーティカーといえば、そのメーカーのイメージリーダーとして、社内のエンジニアが精魂込めて設計、製造するものです。それを社外メーカーに託すというのは、これまででは考えられなかったことです。それだけ日本メーカーの開発力が評価された証ともいえるでしょう。

フィアット版では、どこが変わった?

フィアット124は、シャシーなど基本骨格はロードスターのものを用いて、主にエンジンとアウターパネルをフィアット用にアレンジしなおされています。
映画で昔、アメリカの西部劇をイタリア風にアレンジした作品がヒットして、“マカロニウエスタン”と呼ばれましたが、その言い方を借りれば、“マカロニロードスター”といえるかもしれません。では、どのくらい“マカロニ”っぽくなったのでしょうか。まずは気になるデザイン面を見てみましょう。 出典: http://en.wheelsage.org/fiat/124/95786/pictures/c4abze/
フィアット 124スパイダー 出典: http://en.wheelsage.org/mazda/roadster/82276/pictures/wa8hv6/
マツダ ロードスター 出典: http://en.wheelsage.org/fiat/124/95786/pictures/u8ltvx/
フィアット 124スパイダー 出典: http://en.wheelsage.org/mazda/roadster/82276/pictures/is4cu7/
マツダ ロードスター

メカを透視図でチェック

メカの透視図で124スパイダー、ロードスター、それぞれを比べてみます。
出典: http://www.fiat.it/124-spider/performance
フィアット 124スパイダー 出典: http://www.mazda.co.jp/cars/roadster/feature/packaging/
マツダ ロードスター 側面の画像を見る限り、ギアボックスはロードスターのものが使用されているようです。ロードスターのマニュアルトランスミッションは今回新たに設計しなおされたもので、スポーティで小気味よいフィールがあり、それがそのまま124スパイダーでも楽しめそうです。 出典: http://www.fiat.it/124-spider/performance
フィアット 124スパイダー 出典: http://www.mazda.co.jp/cars/roadster/feature/weightsaving/
マツダ ロードスター 124スパイダーのエンジンはターボ付きのため、インタークーラーなど補機類も装着されエンジンルーム内の密度が高くなっています。フロントヘビーになることが予想されますが、それがハンドリングにどのような影響をおよぼすか注目されます。

エンジンはフィアット自慢の、1.4L マルチエアを搭載

ロードスターとの比較でいちばん変わったのがエンジンで、フィアット最新のダウンサイジング・ターボ、1.4L マルチエアエンジンが採用されています。
排気側のバルブを油圧で制御するという新発想のテクノロジーにより、低回転から高回転まで最適な吸気タイミングを実現、低速側では1回の吸気で2回開閉するなど、まさにマルチな動きにより、小排気量とは思えない粘り強く厚いトルクと、優れた省燃費性を達成しています。これにターボを組み合わせることで全域のパワー特性をさらに強化しています。ちなみにイタリア仕様は140ps/240Nm、アメリカ仕様は160hp/184 lb-ftと発表されています。

フィアットのエンジンは昔から「アクセルを開けろと、せがんでくるような性格」といわれますが、この現代のエンジンにもそのDNAは息づいています。回せば回すほど元気いっぱいに吹け上がり、またレスポンスも良いため、ついついアクセルを開けて走りたくなります。街中はもちろん、郊外のオープンロードやワインディング、さらにハイウェイなどでも、まさにイタリア車らしい元気で楽しい走りの世界が味わえそうです。



ルーツとなった、「124スポルトスパイダー」を振り返ってみよう

1966年デビューの「124シリーズ」のオープンモデル

出典: http://en.wheelsage.org/fiat/124/95815/pictures/wh9cjz/
ニュー124スパイダーのルーツである「フィアット124スポルトスパイダー」を見てみましょう。
124スポルトスパイダーは、1966年にデビューした「124シリーズ」のオープンモデルです。ほかにセダンやクーペもラインアップされていました。いまでは少なくなりましたが、ひとつのネーミングのクルマでセダン、クーペ、ワゴン、商用バンと作り分けてひとつのシリーズとして販売することは以前はよくありました。こうした多彩なシリーズ展開は、日本車でいうとカローラが代表的でしょうか。

ただ、欧米のメーカーで特徴的なことは、いつの時代もそのシリーズに必ずといっていいほどオープンモデルが加えられることです。124の前モデルに1300/1500シリーズがあり、それぞれ4ドアセダンとワゴンをラインアップしていましたが、それに加えて1500カブリオレやDOHCエンジンを搭載したよりスパルタンな1600Sカブリオレが発売されています。欧州でライバルのルノーやシトロエンなども同様です。“屋根が開くモデル”は、当時の必須アイテムだったわけです。

デザインは、カロッツェリア・ピニンファリーナ

124スポルトスパイダーは、エレガントなデザインで定評のカロッツェリア・ピニンファリーナのデザイン。大衆車がベースで、しかもそれほど高価な設定はできないため、ボディの抑揚は最小限に抑えられていますが、それでもスッキリとしたサイドフォルムに描かれた波打つプレスライン、チャーミングな尻つぼみのテールエンド、パワーを予感させるボンネットの二筋のバルジ、左右のフロントエンドをえぐった中に埋め込まれたヘッドライトなど、随所に名匠ならではの冴えが見て取れるデザインです。
そのボンネットの下には90HPと112Nmを発揮する1,438cc DOHCエンジンを搭載、また5速ギアボックスや171km/hの最高速度と、0-100km/h加速は12.5秒という俊足を発揮しました。 出典: http://www.autoviva.com/fiat_124_spider_1600/photo-make/36929

20年以上ものロングセラーを記録

フィアット124スポルトスパイダーは、長期間生産されたオープンモデルとしても知られていて、1966年の発表から20年間、1985年まで製造が続けれていました。その間、エンジンが2リッター/110HPに換装されたり、エクステリアのマイナーチェンがあったりしましたが、基本は発表当時のままで販売が続けられました。
1982年にはフィアットのラインアップからは外れますが、製造を請け負っていたカロッツェリア・ピニンファリーナのブランド名で発売されることになり、車名が「ピニンファリーナ 2000スパイダー」と変更されました。

アルファロメオのスパイダーも、奇しくも124スポルトスパイダーと同じ1966年にデビューし、こちらは1993年までロングセラーを続けています。彼の国の人たちにとって、オープンモデルはなくてはならない愛着のモデルといえそうです。

ニューモデルに継承されているデザイン

その124スポルトスパイダーの“後継”となるのがニュー124スパイダーです。発売される2016年は、ちょうどデビューから50周年であり、それを記念したモデルのリリースなどもフィアットから発表されています。
長いこと親しまれた124スポルトスパイダーの再来、とフィアットはリリースで述べています。その証しに、ほら、これだけ旧モデルのオマージュがあるでしょう、とフィアットは次のような画像で説明しています。 出典: http://www.fiat.it/124-spider/design

WRCラリー用に「124アバルト・ラリー」も開発

124スポルトスパイダーの派生車種として1972年に「124アバルト・ラリー」が開発されています。WRC(世界ラリー選手権)ベース車両として開発され、レギュレーションの関係から約1,000台が生産されました。

アバルトは、フィアットなどのメーカーのクルマをチューニングしてツーリングカー・レースなどで大活躍した名チューナー。1970年代になってフィアット傘下となり、そこで開発されたのがこの124アバルト・ラリーです。

DOHC 1.8Lエンジンで、ウェーバー・ツインチョークキャブレターと高圧縮比により128HPにまでチューンアップされ、さらにサスペンションの変更やボディ剛性アップなどが随所に図られました。ボディはオーバーフェンダーのほかFRPのフロントフェンダーやトランクリッドで軽量化、さらにオープンボディはFRP性のハードトップによりクローズドボディに変更されました。

WRCラリーに出場するマシンは最終的に210HPまでチューンアップされ、1973〜75年シーズンにフィアットワークスとして参戦、各レースで大活躍し一躍人気を集めました。ラリー専用として開発されたランチア ストラトスなどとも名勝負を繰り広げ、アバルトのラリーカーとして人気の高い131アバルト・ラリーが登場するまで参戦していました。

ニュー124スパイダーにも、アバルト版は登場する?

出典: http://www.sannioportale.it/public/articoli/fiat-toro-124-spider-e-tipo-il-nuovo-che-avanza–190365.asp
アバルト版を予想するイラスト ニュー124スパイダーの発表で、従来同様、そのアバルト版を期待する声も高まっています。本原稿制作時(2016年1月)はまだアバルトから正式発表はありませんが、関係者の話を総合すると、高い確率で登場しそうです。現代版のアバルトは、従来と同様、フィアットのコンパクトカーを大幅にチューンアップしてラインアップしています。その走りはまさに“小粒でもピリリと辛い”といった感じで、走り好きを中心に多くのファンを集め最近街でよく見かけるようになりました。そのアバルトの新マシンとあって、心待ちにしている人も多いでしょう。
また、噂では、以前と同様にこの新マシンでラリーに本格参戦するのではないか、ともいわれており、モータースポーツの面からも今後の動きに期待が高まっています。

ひとくちに“オープン”といっても、いろいろある

イタリアは、「スパイダー」「バルケッタ」

次に、124スパイダーの大きな特徴、「オープン」について見てみましょう。モデルの呼び方は国や使い方でさまざまに分かれています。「オープンカー」という呼び方は主に日本だけです。

124でも名乗っている「スパイダー」は、主にイタリアで使われている名称です。屋根を開け、重心を低くしたフォルムが蜘蛛=スパイダーに見えるからなど、由来には諸説あります。スパイダーは、通常は屋根を開けて走るのが“当たり前”です。

同じイタリアでも、「バルケッタ」と呼ぶモデルもあります。イタリア語で「小舟」の意味で、基本的にシンプルなコンパクトモデルで使用されます。

スパイダーもバルケッタも、屋根は開けて乗るのがスタンダードのため、その状態で最も美しく見えるようにデザインされています。ここでは「屋根」と書いていますが、多くの場合、布と鉄の骨で作られた簡易的な「幌」と呼ぶべきものが装備されます。 出典: http://www.maserati.com/maserati/en/en/index/about-us/heritage/sportcars/barchetta-corsa.html
Maserati Barchetta Corsa

イギリスは「ロードスター」「ドロップ・ヘッド・クーペ」

同じように屋根を下ろして走るモデルでも、イギリスになると「ロードスター」となります。マツダのロードスターのように、ライトウェイトで2シーターのスポーツカーがそう呼ばれ、MGなど多くのモデルが生まれています。速く走るために重く邪魔な屋根を外したクルマですので、装備されるのは幌、しかもロータス セブンのように速さを追求したモデルは幌というよりカッパの一部のような、かなり簡素な幌しかないものもあります。

これに対してイギリスには「ドロップ・ヘッド・クーペ」と呼ばれるモデルもあります。内張りのあるしっかりとした屋根を持ち、クーペと変わらない耐候性を持つモデルで、その名の通り、頭を外す=屋根が外せるクーペのことです。頭文字をとって「DHC」と呼称されることがあります。屋根を上げた状態であっても、スポーティなフォルムになるようにデザインされます。

ロールスロイスやベントレーなど、ハイブランドのスポーティモデルとして多く作られ、オーナーのステイタスの証とされることもあります。固定式の屋根(ハードトップ)を持つのは「フィクスド・ヘッド・クーペ(FHC)」です。 出典: https://www.rolls-roycemotorcars.com/en-GB/phantom-drophead-coupe.html
Rolls Royce Phantom Drop Head Coupe

「カブリオレ」「コンバーチブル」なども

またドイツやフランスでは「カブリオレ」があります。スチールやFRPといった耐候性に配慮した屋根を装着したモデルで、屋根は取り外してトランクなどに収納します。南欧ほど天候の優れない地域でオープンの雰囲気を楽しむモデルとして多く作られ、最近は電動で瞬間的に屋根が格納/装着されるモデルも発売されています。屋根はその素材からメタルトップなどとも呼ばれます(それに対して幌はソフトトップ)。

アメリカでは、「コンバーチブル」という呼び名が一般的です。クーペとしても、オープンでもどちらでも変えられる=convertibleというクルマです。
また、リアのウインドウとピラーはそのままに、ルーフの部分だけが外せる「タルガトップ」というモデルもあります。 出典: http://www.autobild.de/klassik/artikel/peugeot-205-cti-cabriolet-im-klassik-test-1882664.html
Peugeot 205 CTi Cabriolet

欧米では文化として根付いている、オープンモデル

オープンモデルについてここまで詳しく紹介したのは、このタイプのモデルが欧米で一般的なクルマだということを説明したかったからです。クルマのボディスタイルは、どれも馬車を起源としています。馬車は当初、屋根のないオープンスタイルが当たり前でした。クルマのデザインもそれを倣っていますので、オープンのスタイルがあるのは当たり前なのです。

さらに、目的や用途、さらに使われる風土や気候によってオープンモデルは独自に発達してきました。
速く走る=軽量化することを目的に屋根を撮ってしまおう、という発想で作られたオープンモデルがある一方で、エレガントなスタイルを楽しむためのモデルもあります。さらにステイタスや憧れの対象となるものも。それぞれの目的や用途に応じた呼び方があり、オープンのスタイルとして結実されてきたのです。
また欧米では例えクルマで移動しているときでも、空気や陽ざしといった自然と一体となることを好むことも、“オープン文化”の根底にあります。

124スポルトスパイダーも、同時代を走ったアルファロメオ スパイダーも、こうした文化が背景にあったからこそ、ロングセラーを続けることができたともいえます。 出典: http://www.autoviva.com/fiat_124_spider_1600/photo-version/36927?version_id=6163



まとめ

マツダ ロードスターは、2015年の日本カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれるほどの人気車。さらにフィアットからも124スパイダーが登場したほか、アバルト版も期待されます。それぞれに個性があり、スポーティなクルマ選びがますます楽しくなりそうです。
また、すでにロードスター用のアルミホイールやサスペンションなどが発売されており、フィアットやアバルトの登場で、それぞれのブランドのアフターパーツのマーケットもさらに賑わいを見せることでしょう。サスペンションなどのメカパーツは互換性が期待でき、アイデア次第でカスタマイズの楽しさもいっそう広がりそうです。