【このクルマでスタックしたら…】和製ハマー「トヨタ・メガクルーザー」

自衛隊が誇る多目的車両「高機動車」。米軍のハンヴィーがハマーとして民生化されたように、トヨタから民生車両「メガクルーザー」として販売されていました。「このクルマでスタックするようなら、キャタピラじゃなければ無理」と言うほどのメガクルーザーの性能、そしてライバル(?)ハマーとの優劣。今回は、そんな気になるポイントに迫ってみます!

自衛隊「高機動車」の民生版「トヨタ・メガクルーザー」登場

「トヨタ・メガクルーザー」は、1993年の「第30回東京モーターショー」で参考出品された後、1996年1月に発売された多目的車で、陸上自衛隊採用の高機動車の民生版です。ただ、民生用とは言え、陸上自衛隊ほどにタフな利用状況が想定されない航空自衛隊や海上自衛隊では高機動車ではなく、メガクルーザーが採用されいてる逆転現象も起きています。

ベースになった自衛隊の高機動車は、略称をHMV(ハイ・モビリティ・ビークル)と防衛省が呼んでいる車両で、このように自衛隊とはいえ主に陸上自衛隊が装備している人員輸送用車両ですが、陸上自衛隊の中でも様々な派生車両を生み出しています。主な利用目的が米軍のハンヴィーと重なることや、そのフォルムが似ていることから、「ジャンビー」などとも呼ばれますし、またハンヴィーの民生版から、「ジャパニーズハマー」と言う呼ばれ方をしていた時期もあります。

SUVとは一線を画す、任務遂行のために特化した「多目的車両」

ハンヴィーを民生化する際、アーノルド・シュワルツェネッガーが強く要望した話は有名で、主にSUVとして利用されていますが、こちらのメガクルーザーは開発の主眼を災害時の救援や人命救助などの「任務を迅速に遂行する」ところに置いたため、SUVとして娯楽用の利用はほとんど想定されていません。そのため、販売初期には個人オーナーでの購入もありましたが、その需要も落ち着きを見せだすと主要な顧客はJAFや自治体、そして消防などと航空自衛隊、海上自衛隊と公的機関となりました。

高い小回り性能と路面グリップ能力

全長は5,090mm、全幅2,170mm、ホイールベースも3,395mmで、よく似ていると言われるハマーH1でも全長4,686mm、全幅2,197mm、ホイールベース3,302mmですから、匹敵というよりもむしろハマーよりも少しくらいのと非常に大きな車体です。

ただ、リアに最大12度の逆位相4WSを装備されているので、最小回転半径はハイラックス・サーフの5.7mよりも小さい5.6mに抑えられています。この逆位相4WSはハマーにはない機構のため、日本の道路事情を考えるとハマーよりは格段に楽になっています(ハマーH1の最小回転半径は8.1m)。但し、リア・オーバーハングが大きいため、狭いところでの転回で車両感覚の欠如は痛いことになるかもしれません。また、センタリングスプリングによるフェイルセーフ機構を備えているので、油圧系統やエンジンに異常があれば、ニュートラルポジションに保たれることになります。なお、これもハマーにも採用されている機構ですが、この特殊大径タイヤ(リアのみ)に対して、タイヤ空気圧調整装置をオプションで備えいるので、空気圧を2段階で減圧できます。このことでグリップ力を必要とする不整地の走破時や厳しい登坂時に強いサポートになっています。

電動ウインチが標準装備です

駆動を路面に伝えるため、トルク感応型LSDを装備しているのは当然ですが、更にマニュアル・デファレンシャルロックも採用され、さらに先ほど書いたタイヤ空気圧調節機能も装備されています。これだけの装備があることから、「このクルマでスタックするようなら、後はクローラ(キャタピラ)付きの車両を使う以外に走行手段はない」と表現されているのです。

ただ、高機動車とは違いパンク後も走行可能なランフラットタイヤを履かせている訳ではないので、スペアタイヤを装備しています。ただ、人力では手動のウィンチを使っても上下させることは困難なので、タイヤを動かすために電動ウインチが標準装備されています。ボンネットは高機動車では真空成形のFRPを使っていますが、コストダウンのため積層FRPが使われています。

サンルーフという名の作業用ハッチが装備できます

ディズニートミカコレクション D-25 トヨタメガクルーザー パイレーツ・オブ・カリビアン
不正路面を考慮した機構として最低地上高を高くする必要がありますが、ハマーと同様にギヤが仲介した形でハブを駆動することでドライブシャフトの上方オフセットが行えるハブリダクション機構を採用しています。この機構と37インチの特殊大径タイヤとの組み合わせにより、最低地上高420mmを実現しています。ただ、420mmも地上高があると腰高となり不安定になりそうなところですが、フレーム下やサスペンションアームをうまく処理していて、また、ハブリダクションドライブの採用もあって、最低地上高の420mmでも問題がないのです。ただ、ハブリダクションによってホイール内にブレーキを装着できません。そのためインボード式ディスクブレーキを採用しているのですが、止まる直前、ブレーキを強くかけてしまうと、ハブリダクションのバックラッシュとサスペンションのたわみの相乗効果で船のようなピッチングが起こることがあります。

乗車定員は6名で、娯楽色がないメガクルーザーらしくないSXA10系RAV4の着脱式サンルーフがオプションで装着可能ですが、実際には作業用ハッチという意味で取り付けるものになっているようです。ただ、元々の高機動車ではサンルーフ装着を想定していなかったため、メガクルーザーではサンルーフに合わせ前部のルーフが不自然に膨らんでしまっています。

内装は極めてシンプル。それは多目的車だから

内装はエアコン、オーディオ取り付け用に2DINのスペースがとられています。これはセンターコンソールにあるのですが、ドライバーに向いて取り付けるため、助手席側からは操作できない配置になっています。言わば、それほどインテリアに気を使っていない証拠だと思うのですが、基本的にメガクルーザーの内装は非常にシンプルで、インストゥルメンタルパネルにはタコメーターもなく、トランスミッションは4速オートマチックのみが用意されています。この辺りが「SUVではない」というポイントでしょう。基本的に災害救援などに必要な機能に集中した結果がトヨタ・メガクルーザーなのです。

しかし、それでも価格は決して安くなく当初の車体価格は962万円、後にエンジンが変更されると980万円となっており、乗用車として見ればホンダNSXクラスの効果価格車となります。ボディーカラーは白・紺の2色でした。なお、ホイールベースを短縮したシャシーがダイナ、コースターとも共用されていたじきがあります。一般には高機動車が兄弟車両と言われますが、この2車種も兄弟というには少し遠いですが、親しい関係だったと言えるかもしれませんね。 【基本情報】
トヨタメガクルーザー
乗車定員:6人
ボディタイプ:4ドアSUV
エンジン:(1996年1月〜1999年4月)15B-FT型4,000cc直列4気筒、(1999年5月〜2002年)15B-FTE型 4,100cc直列4気筒
最高出力:(1996年1月〜1999年4月) 155PS/39kgm、(1999年5月〜2002年)170PS/43kgm
変速機:4速オートマチック
駆動方式:4WD
サスペンション:4輪ダブルウィッシュボーン/縦置きトーションバー
全長:5,090mm
全幅:2,170mm
全高:2,075mm
ホイールベース:3,395mm
車両重量:2,850kg
ブレーキ:インボード式ベンチレーテッドディスク
タイヤ:37×12.50R17.5 8PR LT
タンク容量:108リットル
最小回転半径:5.6m 【基本情報】
高機動車 ※参考情報
乗員数:10名
エンジン 水冷直列4気筒OHV4バルブターボディーゼル インタークーラー付き
変速機:ロックアップ機構付4速オートマチック
駆動方式:4WD
最高出力:170ps/3,000rpm
全長:4,910mm
全幅;2,150mm
全高:2,240mm
重量:2,640kg
ホイールベース:3.395m
燃料搭載量:108リットル
旋回半径:5.6m
備考 諸元は生産時期により若干異なる[2]



競合車(?)「ハマーH1」との比較

では、メガクルーザーの唯一の競合というべきハマー。それもH1とメガクルーザーを少し比較してみましょう。外観は正直良く似ていますが、これはメガクルーザー「親」の高機動車が、ハマーの「親」ハンヴィーに良く似ている事が原因ですから、敢えて除外してみましょう。

まず燃費ですが、ハマーH1は約4キロ/リットル程度と言われていて、メガクルーザーの場合、カタログ値としても公開はされていませんが、実測で7キロ〜10キロ/リットル程度と開きが出てきます。また、先ほど書いたように最小回転半径は日本の道路事情で考えればメガクルーザーの方が遥かに取り回しが良いと言えます。一方で、大きな違いがあるのが内装です。メガクルーザーが徹底して内装にコストを掛けていないことは既に書いたとおりですが、ハマーの場合、メガクルーザーと同程度の車体が定員4人ということで、相当にゆったりとした作りだということが判ります。また、高級グレードのハマーH1アルファになると本革シートなどのラグジュアリーサルーンの様相が出てくるくらいですから、全くクルマとしての性質が変わってきてしまうでしょう。

ここまでトヨタがコストを削りながら、メガクルーザーを少量生産でかつ、ほぼ救難に特化させた理由の一つが母体である高機動車の開発に理由があると聞いたことがあります。高機動車の開発には当然のこととして自衛隊、防衛省が関わっていますから税金が使われたことになります。そしてメガクルーザーはトヨタが高機動車の技術をベースにして製造販売するのですから、広く販売することや海外への輸出には問題があるとされたようです。そのため、民生化はするが、その主要な顧客は公的機関となったようなのです。 【基本情報】
ハマー
販売期間:1992年〜2006年
ボディタイプ:4ドアワゴン、ピックアップトラック
エンジン:水冷V型8気筒OHVターボ、水冷V型8気筒OHVターボディーゼル
最高出力:H1 195hp/3,400rpm、H1・ALPHA 300hp/3,000rpm
変速機:4速オートマチック、5速マニュアル
駆動方式:4WD
サスペンション:ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング
全長:4,686mm
全幅:2,197mm
全高:1,956mm
ホイールベース:3,302mm
車両重量:3,091-3,684kg
タンク容量:H1 メイン95リットル、サブ64リットル。H1・ALPHA メイン102リットル、サブ92リットル
最小回転半径:8.1m

「トヨタ・メガクルーザー」のオーナーになるには

さて、これだけ凄いクルマですが、現在は海上自衛隊や航空自衛隊、そして政府・自治体からまとまったロットで注文があった時に高機動車の生産ラインを使って注文に応じるスタイルでの販売しか行われていません。そのため残念ながら「ハマーより、ハンヴィーよりもメガクルーザー、高機動車」と思ったら中古車での取引しか道がない状態です。ただ生産台数が少ないこともあり、高額な買い物になりますからキチンとしたクルマ選びが必要です。

まず、メガクルーザーは悪路の走破性が高い多目的車だということには注意しましょう。オーナーによっては進んで悪路ばかりを走行して無理をしていることがあり得ます。そのため、実車を見に行く時には、車体全体をチェックしてください。バンパー、車体のキズやサビ、そして修理痕が無いかをチェックしましょう。そして、ボディの下部もチェックしておくことも必要です。そうすることでペイントが剥げていたり、外観からは見つけにくい修理の跡を見つけられることがあります。

整備記録、そして「ハマー」を使って値引き交渉

そして、整備記録やエンジンの掛かり具合やエアコンなどの可動部をチェックして見ましょう。タイヤの空気圧調整装置も使い方の練習がてら触れておく必要がありますね。そして特にタイヤは特殊タイヤなので、履き替えが必要だと少し痛い費用が掛かってしまいます。それだけに4本のタイヤのすり減り具合やホイールのキズ、そしてスペアタイヤもチェックをしておきましょう。

そして、車体に問題がないとわかれば、残るは「お金」の問題です。一般車なら競合車との比較となるのでしょうが、残念ながらメガクルーザーに国産で競合するクルマは、高機動車ぐらいのもの。そこで考えるべきは「ハンヴィー」の存在ですね。つまりハマーです。SUV色の強いハマーですが、メガクルーザーに対抗できるクルマはこれくらいしかないのです。



まとめ

「巨大なクルーザー」と名付けられたトヨタ・メガクルーザーは、数多く生産されなかったこと、それにともなって価格も高いことからメガクルーザーが活躍するような場面を想定した公的機関でも、ハマーを導入しているところが少なからずあるようです。折角の日本の技術ですし、やはり道路事情を考えると小回りが効くメガクルーザーを導入して欲しいところですが、2倍近い価格差を考えると仕方のないことでしょう。ただ出来れば、折角の高性能車両ですから、各自治体にも機能のメリット・デメリットを考慮した購入をしてもらえれば。と思った今回の印象です。