後悔する前に読むべき「ひき逃げ」の愚かさ【最新データで見る「警察の捜査」「厳しい罰則・処分」をチェック】

報道番組で、交通事故のニュースを見ない日はありません。平成26年の交通事故発生件数は、年間で573,842件でした。平均すると1日あたり1,500件をこえる事故が起きています。ここでは、交通事故の中でも人身事故を起こしたのに被害者を放置する、凶悪なひき逃げについて取り上げます。どのような事故をひき逃げと呼ぶのか、どのような捜査が行われるのか、また、ひき逃げの罰則について詳しく解説をしていきます。

よく聞くけど「ひき逃げ」って具体的にどんなこと?

道路交通法で確認する「ひき逃げ」とは?

事故が起きた場合、ドライバーは事故現場に残り、怪我人の状況を確認し、警察などの関係機関に連絡をする、といった行動を取らなければなりません。その責任が法律でどのように定義されているのか、確認してみましょう。

道路交通法第72条第1項前段では、「交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員 (中略) は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」とされています。

「車両等」とは自動車だけでなく、原付バイク、自転車を含む軽車両、トロリーバス、路面電車も対象となります。近年は、スポーツ自転車の交通ルール違反による事故が増えており、自転車でも刑事責任を負うというルールの周知徹底に努めるとともに、自転車に対する指導取締りを強化しています。

●ポイント
<運転停止義務><救護義務><危険防止措置義務>が生じます。

道路交通法第72条第1項後段では、「この場合において、当該車両等の運転者(中略)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(中略)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。」とされています。

●ポイント
<事故報告義務>が生じます。

ひき逃げとはこういうこと

車両等のドライバーが人身事故を起こした場合、<救護義務><危険防止措置義務><事故報告義務>があるにもかかわらず<運転停止義務>を実施しなかった、イコール「逃げた」ことを、ひき逃げと呼びます。また、人身事故ではなく物損事故の場合は、当て逃げと呼びます。



最新データで見る、交通事故情勢とひき逃げの検挙率

平成26年の交通事故情勢

テレビやネットで、毎日のように報道される交通事故のニュース、年間にどれぐらいの件数がおきているのでしょうか。早速、最新の統計データをみてみましょう。

まず、交通事故の発生件数及び交通事故による死傷者数の推移は、1-3-1-1図(参照元:平成27年版 犯罪白書|法務省)のとおりです。発生件数及び負傷者数は,全体の傾向をみると、およそ10年間連続で減少しているのがわかります。最新年でみると、2014年の発生件数は573,842件、負傷者数は711,374人、なかでも死亡者数は4,113人でした。年齢別の死亡者数内訳は、高齢者の交通事故死者数が2,193人と半数以上を占めているほか、歩行中の事故が全体の半数近くになります。 出典: http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/n62_2_1_3_1_2.html#h1-3-1-01
平成27年版 犯罪白書|法務省 では次に、ひき逃げ事件について、統計データをみてみましょう。ひき逃げ事件の発生件数及び検挙率の推移は,1-3-1-2図のとおりです。発生件数は、全体の交通事故傾向と同様に10年連続で減少し,2014年は9,231件(前年比-4.8%)でした。内訳は、死亡事故148件(1.6%)、重傷事故773件(8.4%)、軽傷事故8,310件(90.0%)です。

同図の検挙率グラフによると、事故の重大性がおおきくなるにつれて検挙率が高くなっているのがわかります。 出典: http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/n62_2_1_3_1_2.html#h1-3-1-01
平成27年版 犯罪白書|法務省

平成27年警察白書|警察庁

平成27年版 犯罪白書 目次|法務省

平成27年版交通安全白書 全文(PDF形式)|内閣府

交通事故が起こるその要因

これ以降は、自動車を運転するドライバーに係るひき逃げ事件を念頭に、記述をすすめます。交通事故が起こるその要因は、どのようなものがあるでしょうか。

ドライバー起因の交通事故とひき逃げ

まずは、ドライバー起因の事故です。

飲酒や極端な疲労、危険ドラッグなど薬物の使用、突発的な病気によりドライバーの認知能力が低下し、歩行者との衝突や物損の事故をもたらした事例があります。飲酒していることで適切な判断ができなかったり、そもそも飲酒していることを隠匿しようとする意識が働き、そこからひき逃げにつながるわけです。この場合、時間を経て飲酒の事実をなかったことにしたり、傷ついた車両には偽装工作を行う事例もあります。

環境起因の交通事故とひき逃げ

大雨や大雪、夜間などの走行環境が原因で、直前に現れた歩行者に気が付けなかったり、バックして小さな歩行者に衝突したり、衝撃音に鈍感になる事例があります。

スリップして縁石に乗り上げただけ…後ろが見えずに三角コーンでも巻き込んだだけ…こちらは青信号だったから気のせい…軽微なものだと自己判断してしまい、逃亡に至る事例があります。



ひき逃げではどのような捜査が行われるか

警察関係機関には、車両等に関して、膨大な量の車種・年式別のデータベースがあります。重傷者がでるほどの大事故では、何かしらの証拠が現場に残ることが多く、物証として検挙率が高くなります。ひとたび事件が発生すれば、都道府県警察本部刑事部の中に編成されている鑑識が、事件の物証を採取し科学的に検証します。科捜研(科学捜査研究所)は各都道府県警察本部の付属機関で、犯罪捜査では鑑識と共同で活動することもあります。

タイヤ痕・スリップ痕により、車種と車両の進行方向を推定する

タイヤは路面との接地面に当たるトレッドに独特な模様をもつため、そのトレッドパターンにより車種を絞り込みやすいといわれています。また、タイヤの成分は製品により異なるため、販売時期から所有者の絞り込みにもつながる手がかりです。

スリップ痕は、ブレーキをかけた位置から次第に濃くなり、タイヤ面の摩擦により進行方向の推定が可能となります。道路上にある小石などが掘り出された場合にも、同様に車両の進行方向が推定されます。

塗装・塗膜片により、車種の特定と接触した事実を証明する

車両の塗膜片が1mmあれば、車種特定を行うことができるといわれています。厚さ80~120μmの塗膜片を斜めに削り落として顕微鏡で色の層を確認したり、分析装置を使うことで、下塗り・中塗り・表面色・クリアの成分をすべて特定します。それらをデータベースサンプルと突合して、所有者の絞り込みを行います。

塗膜片は、その断面と容疑車両の損傷部が合致することにより接触した事実を証明できるので、その採取には注意を払います。また、事故車両を特定するために、車両に付着した被害者衣類の繊維や毛などの微細な物的証拠も採取して、事実の証明に役立てられます。

ひき逃げの罰則・処分について

ひき逃げをはじめとする交通事故では、刑事責任、行政責任、民事責任の3つの責任を負うことになります。では順にみていきましょう。

ひき逃げの「刑事責任」

一般的には逮捕・勾留・起訴といった刑事事件の手続が進行し、裁判によって刑が確定されます。

それでは、ひき逃げの刑事処分について、どのような刑罰が科せられるのかみてみましょう。刑罰は主に(ア)死傷事故に係る処分 と、(イ)道路交通法違反に係る処分 にわけられ、事件の経緯(飲酒・危険運転など)によって問われる罪が変わります。

(ア)死傷事故に係る処分
・殺人罪(死刑、無期懲役もしくは5年以上の懲役)
・危険運転致死傷罪(負傷:15年以下の懲役、死亡:1年以上20年以下の懲役)
・過失運転致死傷罪(7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金)

(イ)道路交通法に係る処分
・救護と危険防止措置の義務違反(10年以下の懲役、または100万円以下の罰金)
・事故報告義務違反(3ヶ月以下の懲役、または5万円以下の罰金)
・運転停止義務違反(5万円以下の罰金)

有期懲役刑の上限は20年とされていますが、刑法上併合罪と判断される場合や再犯の場合は刑が重くなることがあり、最長で30年になることがあります。

刑に執行猶予が付くこともありますが、無免許運転・飲酒運転・速度超過などの要因や、相手方の傷害が重たい場合には、実刑判決を受けることがほとんどでしょう。

ひき逃げの「行政責任」

ひき逃げの行政処分については、運転免許に関することになります。

自動車運転免許の交通違反に関する点数制度は、違反ごとに点数が加算される累積方式をとっています。交通違反や交通事故に一定の点数を付けて、過去3年間の累積点数等に応じて免許の停止や取消等の処分を行う制度です。

ひき逃げの行政責任 〜点数加算について〜

事故による行政処分は、複数の要因により加算されます。

(1)人身事故を起こした時点で安全運転義務違反として2点、(2)個別の事情に応じて点数が加算、(3)ひき逃げとして35点が追加 されます。では、具体的な点数と条件をみてみましょう。

(1)全ての人身事故について
・安全運転義務違反 2点

(2-1)死亡事故
・運転者の一方的な不注意によって発生した場合 20点
・被害者にも過失があった場合 13点

(2-2)負傷者の治療期間が3ヶ月以上で後遺障害がある場合
・運転者の一方的な不注意によって発生した場合 13点
・被害者にも過失があった場合 9点

(2-3)負傷者の治療期間が30日以上3ヶ月未満である場合
・運転者の一方的な不注意によって発生した場合 9点
・被害者にも過失があった場合 6点

(2-4)負傷者の治療期間が15日以上30日未満である場合
・運転者の一方的な不注意によって発生した場合 6点
・被害者にも過失があった場合 4点

(2-5)負傷者の治療期間が15日未満の場合
・運転者の一方的な不注意によって発生した場合 3点
・被害者にも過失があった場合 2点

(3)ひき逃げについて
・救護義務違反 35点

●具体例
ひき逃げ死亡事故 57点【(1)2+(2-1)20+(3)35】
ひき逃げ傷害事故 40点【(1)2+(2-5)3+(3)35】

点数計算の原則 :警視庁
警視庁 / 運転免許 / 行政処分 / 点数計算の原則

交通事故の付加点数 :警視庁
警視庁 / 運転免許 / 行政処分 / 交通事故の付加点数

ひき逃げの行政責任 〜点数による行政処分について〜

違反点数は過去3年分が合算され、点数によって「免許停止」や「免許取り消し」といった行政処分が下されます。行政処分前歴の有無によって、点数基準が異なります。さらに、再度免許を取得することを制限される「欠格期間」が設けられています。ひき逃げの場合(救護義務違反)は、その加算点数により「免許取り消し」処分となりますが、この欠格期間が長くなる場合があります。

免許取り消し処分相当の累積点数の場合、免許を交付している都道府県警察本部行政処分担当課から、意見の聴取を行う通知があります。これは、処分が公正適切に行われることを保障するための制度です。この意見の聴取を経て、免許取り消し処分が決定されます。

●具体例

ひき逃げ死亡事故 57点【(1)2+(2-1)20+(3)35】
→行政処分前歴が0回 免許取消・欠陥期間7年
→行政処分前歴が1回 免許取消・欠陥期間8年

ひき逃げ傷害事故 40点【(1)2+(2-5)3+(3)35】
→行政処分前歴が0回 免許取消・欠陥期間4年
→行政処分前歴が1回 免許取消・欠陥期間5年

行政処分基準点数 :警視庁
警視庁 / 運転免許 / 行政処分 / 行政処分基準点数

ひき逃げの「民事責任」

ひき逃げでの民事責任で大きなものは、損害賠償によるものです。

物損がある場合や通院治療に関する財産的損害賠償額を算出したり、被害者の精神的な苦痛や不快感に対する慰謝料額を決めたり、そのための示談を行ったりしなければなりません。被害者が死亡、または後遺症が残ってしまった場合には、その賠償金も数千万円~の規模になってきます。

任意保険に加入していた場合は保険で補うことができます。

まとめ

ひき逃げとは

ドライバーが人身事故を起こした場合、<救護義務><危険防止措置義務><事故報告義務>があるにもかかわらず<運転停止義務>を実施しなかった場合、これをひき逃げと呼びます。

ひき逃げの罰則・処分

ひき逃げをはじめとする交通事故では、刑事責任、行政責任、民事責任の3つの責任を負うことになります。

人身事故を起こした要因として、信号無視やスピード違反があると、過失運転致死傷罪に問われることがあります。アルコールや薬物の影響がある場合には、危険運転致死傷罪に問われ、さらに重い罪になることがあります。

人身事故や交通違反を起こすと、自動車運転免許に関する点数が加算され、免許の取り消しなど行政処分を受けます。

被害者に対して、損害賠償責任が生じます。

ひき逃げの加害者にならないために

急な事故で気が動転することが想像されますが、次の行動を確実に実施しましょう。

●事故発生直後には、現場を去らずに、ただちに運転を停止させましょう。
●負傷者を安全な場所に移動させ、救急車の要請など救護にあたりましょう。
●二次被害を起こさないように、道路上の危険防止につとめましょう。
●警察官に、事故発生日時・死傷者の有無・物損の有無・事故後の阻止について報告しましょう。

安心・安全なドライブを

いかがでしたか? 「ひき逃げ」の言葉だけをきくと、逃げることに罪があるように感じてしまいます。しかしその本当の意味は、運転者の義務違反にあります。歩行者にとって、同乗者にとって、なにより、運転者ご本人にとっても、安心・安全なドライブと緊急時の適切な対応を心がけましょう。 【ドライバーの死活問題!?】「免停」ってNANDA?【講習、期間、通知、取り消し、点数など】|GOIN[ゴーイン]
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